Nov 26
2010
『笑う禅僧―「公案」と悟り』 安永祖堂著
「最近、気が晴れないし、坐禅でもしてみようか」
「うちの息子、ぐうたらで根性なしやさかい、坐禅でもさせてみよか」
そんなとんでもないこと "やめておきなさい" とは司馬遼太郎さんの言である。司馬さんは、禅は危険な思想だと言う。
昔、マルクス主義が危険だと言われた時代がありましたが、(禅は)もっと根源的な意味で、人間として最も危険な、劇薬の部分を持っています。いいかげんな者が禅をやってはいけないと私は思っています。(本書98頁)
司馬遼太郎のこの言葉を、著者は、抑下の托上、つまり、この上ない褒め言葉だと言われる。
劇薬とは効き目の強い薬物であり、もっと効き目が強くなると毒薬になる。要するに、用いかたによっては薬にもなれば毒にもなる。司馬は「禅は効き目のある劇薬」という言い回しで、そのことを言いたかったのではないだろうか。
禅はどのように効き目のある劇薬か。
本書に取り上げられているのはそのことである。
世間で「禅問答のよう」と言われるチンプンカンプンな話、禅家でいう「公案」とはどんなものなのだろう。たとえば「趙州柏樹子」の章。