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現代語訳の蘭渓禅師語録

 

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約770年前の鎌倉時代。南宋から渡来した蘭渓道隆禅師(1213年~1278)。まずは相模の常楽寺を開山した禅師は、当時の執権・北条時頼公により、鎌倉・建長寺の開山として迎えられたのでした。その後、請われて京都・建仁寺に住しました。この3カ寺の住持の間に残した、上堂・偈頌・頌古・普説・法語・小参・佛祖讃・小佛事を収録し『蘭溪和尚語録』として編纂され、かの虚堂智愚が跋文を書き、景定5年(1264)に南宋で上梓されました。

渡来僧であった蘭渓禅師は、日本の修行僧たちに、もちろん中国語で法を説いたわけです。現代のように日常は現代日本語を使い、偈頌などは読み下し文として法を説いていても、語録としては漢文のままで収録しているのとは違い、ナマの中国語で法堂の上段から法を説かれていたに違いないのです。

漢文(南宋の中国語)で遺されたこの『蘭溪和尚語録』を、中国人の研究者である彭丹さんが、鎌倉などで禅関係の研究会に出たり、建長寺派管長吉田正道老師に直接にご接化を受けたりし、禅のことを学びつつ、現代日本語に翻訳されたのが、このたび弊所より発売される『蘭渓録』なのです。

この語録はその生々しさが伝わってきます。たとえば大慧宗杲禅師(1089年~1163)であるとか、無準師範禅師(1177~1249)の話頭なども出てきます。こういった聞いたことのある禅僧と同時代の蘭渓道隆禅師の説法ですから、なんともリアリティに溢れているのです。これを現代日本語で読めるのは、訓読文を読んでいるのとは違う感動があると思います。

本書の刊行は、大本山建長寺の元総長である高井正俊師の熱い思いがあって実現しました。また現総長の長尾宏道師のご理解も得て大本山建長寺派のご厚意も得た結果、500頁を超える大部の書籍で有りながら、手に取りやすい価格での頒布が可能になりました。

是非この機会にお求め頂ければと思います。

『蘭渓録』のお求めはこちらからどうぞ。

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花園大学歴史博物館開館20周年記念「両足院―いま開かれる秘蔵資料―」

 

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禅文化研究所のWEBサイトでもすでにお知らせしておりますが、禅文化研究所のデジタルアーカイブズ事業で調査の成果(花園大学歴史博物館との共同調査)として、この春は建仁寺派の両足院に伝わる貴重な資料の展覧会を開催します。
会期は4月2日から6月13日、会場は花園大学歴史博物館、入場無料です。

両足院は龍山徳見を開山とする建仁寺塔頭で、江戸時代には、歴代住職の雲外東竺などが、五山の中でも学徳に優れた僧に与えられる「碩学」の称号を授与され、対馬の以酊庵に輪住して朝鮮外交に深く関与しました。

そういったことから、両足院に伝わる五山文学の資料は非常に価値のあるものも多く残っていますが、今までは限られた研究者が目にしてきただけで、一般の方はもちろん、研究者などが直接見てみたいと思ってもそれをかなえることはほぼ不可能でした。

そんな中、一昨年より、これらの書籍資料を含めた書画軸などの悉皆調査を委託され、禅研と花大歴博で共同して調査をしてきましたが、この度ようやくそれらの成果として展覧会を開催することができる運びとなりました。

また会期中には2回の特別講演会を開催します。上記の限られた研究者の一人で、もと京都国立博物館におられた赤尾栄慶氏と、近年、両足院蔵の朝鮮物の研究に取り組まれている片山真理子氏によるご講演です。あわせてご来場をお待ちしています。

それまでに新型コロナウイルス騒動がどうか収まっていることを祈っています。

また今後は、これらの資料の画像データをWEB上で閲覧できるように進めていくよう、両足院様とも調整しているところです。どうぞお楽しみに。

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新型コロナウイルスにおける社会現象に思う

 

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新型コロナウイルスは、世間、どころか世界を騒がせていますね。世界中が大慌てです。
日本でも、時差通勤だ、テレワークだ、学校は休みだ、行事は中止だ、クラスターの連鎖を防げだとか……。
私も電車通勤しておりますが、あきらかに乗客が減っています。なにもかも中止の一途で寂しく閉塞感があります。

また新聞では、「ぜんそく患者が電車に乗るのが恐い」とまで感じておられる方の記事も見られました。私も「咳ぜんそく」ですし花粉症なので、その影響で咳をしたりしてしまいますが、ホントに嫌な眼で見られたりしてストレスを感じてしまっています。

しかし……
マスクがないからと、それに乗じて転売して一儲けなどしている人もいるようですが、そんな貪るようなことをしてはいけません。足りない人に分けてあげましょうよ。
ライブに行っていたからうつされたとか、たとえ感染しても、他人を恨んではいけません。クラスターにいたからと、それを持ち込んだとされる人に瞋りを感じてはいけません。自分がその人だったらどう感じますか?
トイレットペーパーがなくなるというデマが流れて、薬局やコンビニに走ったり、売ってないじゃないかと店を愚痴るような愚かなことをしてはいけません。慌てない慌てない。

感染してしまった人が悪いわけではありません。売り切れてしまっている店が悪いのでもありません。ウイルスそのものが悪いのでもありません。貪り、瞋り、愚痴る自分の心が煩悩に染まっているのです。

お釈迦様は貪・瞋・癡という人のおちいる三毒を説かれました。三毒に陥るから苦しいのです。お釈迦様はこの三毒から解放されるように教えを説かれました。

お釈迦様が涅槃に入られることとなったのは、チュンダという信者が振舞ったご馳走(トリュフ)に毒が含まれていたからという説があります。お釈迦様が亡くなる原因を作ってしまったとチュンダは嘆き、お釈迦様にお詫びしてもしきれないほどだったでしょうが、当のお釈迦様はそのチュンダを恨むどころか慰め、供養されたご馳走に感謝されるだけでした。

我が身を以て三毒に陥るようなことがないように示されたのだと思います。

我が国民を守るために?、中国や韓国からの入国を禁止したりして、国を挙げて三毒に陥っている現況です。なんとも浅はかとしか言いようがありません。
今こそ、仏智を観じて、皆さん一人一人が落ち着いて我が身を調えませんか。分かち合い、助け合い、思いやりをもって、ともに生きていくのが大乗仏教の智慧ではありませんか。

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アメリカから届いたプレゼント

 

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禅文化研究所にはときどき、ホームページを通じて、諸々のお問い合わせを頂くことがあります。墨蹟の解読であったり、禅僧の名前についてであったり、書籍のことであったり、いろいろです。そんなお問い合わせにできるだけ回答しているのですが……。

海外からも届くことがあり、先般は、アメリカから、"The Sanscrit-Chinese Dictionary of Buddhist Technical Terms based on the Mahavyutpatti by (W)Ogiwara,Unrai" について、コピーかPDFを提供して貰えないかというメールが届きました。

これは梵和大辞典(鈴木学術財団、 荻原雲来)のことらしく、あいにく弊所には、その辞書の元となる16冊本はあるものの、1冊にまとめられた講談社版がないのです。

しかしWEB検索してみると日本ではまだ売っているようだったので、その入手先を教えたり、図書館で写真を撮って内部がどのようなものかを送って差し上げたりしたところ、本日、手書きの英文手紙とともに、この素晴らしい円相が届いたのでした。

手紙には、感謝の言葉と共に、龍澤寺の中川宋渕老師にアメリカで指導を受けた旨のことが書かれていました。私が龍澤寺に入門したのは、この中川宋渕老師が遷化される直前であったので、深いご縁を感じ、またメールで御礼を伝えたのでした。

こちらでは、ちょっとした手間でしたが、彼にはずいぶん助かったのでしょう。よく見れば、このアメリカの男性のメールアドレスにはzazenの文字も含まれていました。坐禅を通して世界と繋がっている、そんな気持ちになったのでした。

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研究所の花 2020/3

 

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ブログ禅が一週間以上も間があいてしまいました。ちょっと忙しいのと、なかなかお伝えできる話題がなくて。
今日はもう3月3日。早いものでもう今年も1/6が過ぎてしまいました。暖冬の今年とはいえ三寒四温のこの頃ですが、それよりもなによりも、世間はコロナウイルスの話題で大騒ぎです。

マスクがないのは仕方ないとしても、風評でトイレットペーパーなども店頭からなくなっているとかで、ちょっと皆さん、脚下照顧。落ち着きましょう。
不要不急の外出は控えるのも大事でしょうが、すべてネガティブに考えるのもどうかと思います。できることはしないと息が詰まってしまいますよ。とはいえ、恒例で毎年3月上旬に行なっている自坊の大般若祈祷会も、4月4日に延期をすることにしました。とりあえずは3月始めの2週間は自粛するべきかなと思った次第です。

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さて、冬は自坊から持ってこられる花が少ないうえに、長持ちするので、久しぶりのお花係で、研究所に生けさせて頂きました。持ってきたのは、スイセン、ヒメリュウキンカ、藪ツバキ、クリスマスローズ、そしてネコヤナギ。

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コロナウイルスのワクチンができたり、病気の原因が解明できたりして、はやく収束し、落ち着いた生活に戻りたいですね。
学校に通う子供達のおられる家庭では、いろいろと大変でしょうが、助け合って切り抜けていきましょう。

そういや、今、映画館で「嘘八百 京町ロワイヤル」という映画をやってます。まだ私は観ていないのですが、その前作である「嘘八百」という映画をビデオで観ました。そしたら冒頭のシーンで、散らばっている車の中に『欠伸稿訳注』の表紙が。そして映画の大事なシーンにも出てきて驚きました。禅文化研究所の前主幹である芳澤勝弘氏の訳注による本なのですから。

思わず芳澤さんにメッセンジャーで尋ねたところ、堺市博物館の学芸員さんとの繋がりでこんなことになったそうです。急に親近感が湧いてしまい、「嘘八百 京町ロワイヤル」も観に行こうかなと思っているところです。あ、でもこれもコロナウイルスが落ち着かないうちには難しいでしょうかね……。

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