１月　一國黄金收拾去、古帆高掛合同船
一国の黄金収拾し去って、古帆高く掛く合同船（春屋妙葩、遺偈）

急ぎ乗れ　即今只今　智慧の舟


２月　趙州云鎭州出大蘿蔔頭
趙州云く、鎮州に大蘿蔔頭を出だす（『碧巌録』三十則）

ダイコンは　さくらじまとも　かぎるまい

３月　一段風流畫不成、洞房深處惱閑情
一段の風流、画けども成らず、洞房深き処、閑情を悩ます（抄伝）

空臼を　踏みて悟りし　無一物

４月　金沙混處金始現、衆草繁時蘭獨香
金沙混ずる処、金始めて現ず、衆草繁る時、蘭独り香し（『句双葛藤』）

かの香り　谷に隠るる　春の蘭

５月　菖蒲吹緑一樽酒、醉裡乾坤是故郷
菖蒲、緑を吹く、一樽の酒、酔裡の乾坤、是れ故郷（虎哉宗乙「客中午日」詩）

主人公　いずれアヤメか　カキツバタ

６月　田家無五行、水旱卜蛙聲
田家、五行無く、水旱、蛙声を卜す（章孝標「田家」詩）

おらが泣く　きみは笑えよ　菩提心

７月　甜瓜生得苦葫蘆
甜瓜、苦葫蘆を生じ得たり（『虚堂録』）

天が下　このカボチャは　ふたつなし

８月　野田生葡萄、纏繞一枝高
野田、葡萄を生じ、纏い繞って一枝高し（劉禹錫「葡萄歌」詩）

夏休み　口じゅうむらさき　山ぶどう

９月　拒霜黄菊爲誰開
霜を拒む黄菊、誰が為にか開く（蘇東坡「九日、臻闍梨を尋ぬ……」詩）

我がために　咲かそとするは　人の欲

10月　湖光迷翡翠、草色醉蜻蛉
湖光、を迷わせ、草色、を酔わしむ（張又新「三月五日、長沙の東湖に泛かぶ」詩）
羽やすむ　トンボに化せし　観世音


11月　心如意心如意、任運隨縁不相離
心如意、心如意、任運、縁に随って相離れず（霊隠徳章「心珠歌」）

意のままに　ならぬ憂き世を　そのままに

12月　萬福萬福、是一是二
万福万福、是れ一か是れ二か（『無門関』三十五則頌）
こうなれば　一も二もなし　万福珍重