白隠禅師法語全集 第8冊 さし藻草・御垣守

SASIMO
『さしもぐさ』は、次の三部からなる。
○さし藻草 巻之一
 さる大名に宛てた書簡の形をとる。第一に、養生して長寿をたもち善政をおこなうことを勧める。養生のためにはまず女色が第一の禁物ゆえ、大奥の女性の数を減らし、倹約につとめねばならない。第二に、この世に高貴な身分に生まれたのは宿善の結果であるが、その身分に奢っていれば、また必ず三途に堕ちることになる。得がたき人身に生まれたのだから、菩提心をおこして菩提を求めよ、と勧める。
○勘発菩提心の偈 附たり御垣守
 巻之一と巻之二の間にはさまる。漢字七字の偈の形をとるが、訓読すれば、仮名法語と同じものである。来世を否定する断無の邪見を否定し、末世の贋僧の無事禅を批判し、公案による見性を勧める。そして、一旦の悟りに安住することをいましめ、永遠の「悟後の修行」を勧め、菩提心なければ魔道に堕つと説く。最後のところでは、悟りにいたる心の過程を心王軍と魔軍の戦いの形で語る。
○さし藻草 巻之二
 仁政と徳治を行った故人の遺言往行を集めたもの。大部分は、唐の太宗の言行を集めた『貞観政要』からとられている。わが朝では仁徳天皇の徳治の例をあげ、君主たるものが執るべきまつりごとの要諦を説く。 
気は民のごとし、民衰えば国亡ぶ。気尽きるときは人も必ず死す。善政を挙げ、菩提を求めるよう勧める。その心なければ魔道に堕ちると説く。
訳注 芳澤勝弘四六判 370頁 2000.4 発行
ISBN978-4-88182-137-4 C0015
在庫あり
2,750  (税込)
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【もくじ】 
さしもぐさ 巻の一(意訳)
松蔭寺来訪のお礼/仁政こそ第一/まず養生、次に仁政について述べる/健康あってこそ徳行も積める/第一の禁物は女性/宮女三千人を放逐した太宗/一夫一妻で事足る/見苦しいお多福という美人/奢侈はすべて民百姓の労苦の結果/痴福は三世の冤/三因仏性/なぜ人身に生まれるのが尊いのか/菩提を求めるからこそ尊い/みかきもり (意訳)/成仏を妨げるもの/世智弁聡は断無の邪見/来世を否定する邪見/源義家の蘇生譚/地獄はあるか。阿波慈光寺南山和尚の答え/地獄から生還した者の例/三代以前に仏教が伝わっていたら/人が尊いのは菩提を願うから/末世の贋坊主/人を誤り導く邪師/在家をたぶらかし名利を求める邪師/正師について公案を透過せよ/永遠に四弘誓願を実践せよ/悟後の修行/菩提心なければ魔道に堕つ/菩提心とは四弘誓願の実践/名利のために伽藍を建てるは邪法/達磨の無功徳/煉丹の法/見性は勇猛の一念のみ/隻手の公案/主心を定めよ/心王と魔軍の合戦/四弘誓願のみかきもり//さしもぐさ 巻の二 (意訳)/伯成子高、野に隠れる/苛政は虎よりも猛し/万民の危うきを救う者は/君不才なれば、民は窮す/臣は肱、万民は股/侯霸の仁治/羊 の仁治/子産の仁治/文帝の節倹/孝宣帝、渤海を救う/武帝の賢者登用/孝宣帝の常平倉/太宗、下問して学ぶ/民豊かなるが真の礼楽/民足るが真の祥瑞/太宗、刺史の善政を考課する/上は天をおそれ、下は群臣の見るをおそれる/太宗の二喜一懼/民の豊安こそ武備にまさる/君子を用いれば君子が集まる/貧時を忘れねば富を保つ/民が富めば、其の中に楽がある/三つの鑑/民は水、君は舟/農は天下の大本/天下は大器なり/万民の心を知るべし/百官の非は朕にある/五穀を貴んで金玉を賎しむ/日食に己の過を省みる/太宗、蝗を呑む/天下は天下の天下なり/仁徳天皇、高どのに登り民情をみる/民のかまどは賑いにけり/暗君は賢臣を用いない/酷吏が国を亡ぼす/仁吏と酷吏/賄賂ある訴えは水に石を投ずるごとし/酷吏を愛した始皇帝/民は一身の元気/お家断絶となったある藩の例/国の亡びんとするや、その貪ること烈し/酷吏一人が出れば、家は断絶する/貪りから起こる酷政/貪って栄える村長/蜂起する百姓たち/真の原因は役人と村長にある/民聚まり、民散ず/村長のための教訓のなぞなぞ/仁君は節倹につとめる/民衰うれば国亡ぶ/百姓は百の御宝

さし藻草 卷之一(本文・注)
勸發菩提心偈 附たり御垣守(本文・注)
さし藻草 卷之二(本文・注)

解説
さし藻草・御垣守 解説

さし藻草 卷之一(原本影印)
勸發菩提心偈 附たり御垣守(原本影印)
さし藻草 卷之二(原本影印)
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