トップページ » 2018年1月29日

西郷どんの逸話 その1

 

NHK大河ドラマ『西郷どん(SEGODON)』がスタートしました。大河ドラマファンのわたしは、初回から楽しみに見ています。前作の『おんな城主 直虎』は、一回も欠かさずに見ました。
小林薫さんが演じた南渓和尚が素晴らしかったですね。

実は、西郷どんも禅に参じておられました。その禅僧の名前は「無三」。どんな人だったかは余り知られていませんが、こんな逸話が残っています。

無三和尚は、薩摩国久志良村の農家に生まれた人である。21歳の時、大阪の薩摩藩邸吏に抜擢され、大いに藩事に尽くした。ところが、たまたま藩律にふれて罰せられることになった。しかし、役人たちがみなその才幹を惜しんで助けたのである。これを機に無三は出家し、剃髪することとなった。無三、53歳の時であった。諸方遊行ののち予州宝泉寺の洞泉橘仙和尚に参じ、ついにその衣鉢を嗣いだ。
その後、無三は藩の島津公に招請されて鹿児島の福昌寺に住することになった。それをねたみ、苦々しく思っていたのが南林寺の住職である。何とかして無三をはずかしめてやろうと、ひそかにたくらんで、晋山式の前日に藩侯に謁見し、「明日行なわれる福昌寺の晋山式の時、殿もひとつ、無三と問答商量なされてはいかがでござろうか」とすすめた。そして、問答する言葉まで教えたのである。
翌日、無三が上堂すると、さっそく藩侯は法堂の中央にすすみ出て、「いかなるかこれ久志良の土百姓」と大声で問うた。
当時、鹿児島ではとくに武士を尊び、農民をいやしむ気風が強かった。武士の出でなければ出家することも許されなかったのである。そこで、農家の出であった無三は、士家の姓を借りて出家したのだが、南林寺住職はそれを知っていてこの問いを教え、そして無三をはずかしめようとはかったのであった。満座の中でその出身を明らかにされたが、無三は少しも驚かない。泰然自若として、おもむろに、「泥中の蓮華」と、ただ一語大喝した。この答話を聞いて、藩侯は深く感悟し、以後、篤く無三に帰依したという。

農民を大切にした西郷どん。無三和尚の教えを聞いておられたのかも知れません。でも、なにぶん逸話の世界。史実は、あっちに置いておきましょう。逸話は、禅文化研究所刊『禅門逸話集成 下』から転載しました。これから、他にも少しずつ西郷どんの参禅逸話も紹介していきます。

大河ドラマファンのわたしは、誰かが無三和尚を演じてくれないかなと、ひそかに期待しています。NHKスタッフの皆さま、よろしくお願いします。

by admin  at 09:00  | Permalink  | Comments (0)  | Trackbacks (0)