Aug 03
2011
『大鹿村騒動記』
秀逸の映画だ。こんな作品に出会うと、日本映画の底力が感じられて、なんとなく誇らしく嬉しい。主演の原田芳雄と大楠道代の名を見て、鈴木清順のツィゴイネルワイゼンをボォーッと思い出した。二人のほか、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、瑛太、三國連太郎、石橋蓮司、冨浦智嗣、小林武彦、小倉一郎等が名を連ねている。よくぞ集めたと、見る前から感心してしまっていたが、見たらもっと感心した。
演技力と華の具わった役者のおかげもあって、どのシーンもこの上ないものに仕上がっている。笑いも見事だ。妻の出奔、痴呆症、性同一性障害・・・各々が背負った日常はずっしりと重いのに、陳腐な"常識"や、ステレオタイプの悪意がすっかり抜け落ちていて、なんとも温かい可笑しさが物語を大らかに牽引して、大鹿村歌舞伎という「大事」が粛々と行なわれる。
日本で一番美しい村、大鹿村の人たちが、ほとんど総出で歌舞伎の場面をもりたてているのも、スクリーン越しにしっかり伝わってくる。
たった一つ、まことに残念なのは、この映画の企画立案者だった主演の原田芳雄さんが7月中旬に亡くなったことだ。常軌を軽々と逸することのできた、稀有な俳優さんの一人だった。
心よりご冥福をお祈りいたします。
by admin at 07:30
いつも話題の多いこのブログ拝見しています。
日本映画も最近は内容が充実していて
最近は、映画館で見るようになりました。この映画も観たいと思いながら、、時間がまだ取れていません。
原田芳雄さんを観ると山崎豊子作「不毛地帯」の大門社長のイメージが強く頭に残っています。
この映画の舞台挨拶も変わり果てた姿で車いすでの
参加、、特別な思いを感じました。
とても良い役者さんがまた消えました、、、残念ですね。
マリーさん いつもコメントありがとうございます。原田芳雄さんが亡くなられたのは本当に残念ですね。この映画は、原田さんの作品の中でも極めて完成度の高いものではないかなあと思われます。