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『スリランカで、ほっ』岩瀬幸代著 -職員オススメ本-




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豊かな自然と、美しい多くの仏教遺跡が残るスリランカ。
お釈迦様(仏教)大好き人間としては一度は訪れてみたい魅惑の国。

そんなわけで、最近スリランカ関連の本を色々と読んでいます。
今回は、岩瀬幸代さんの『スリランカで、ほっ。仏教は心のアーユルヴェーダ』

インドから仏教が伝わったのと同時にアーユルヴェーダの智慧も伝わり、総合的に人を“癒す”役割を担ったスリランカの寺院。そんな寺院と、その周りに暮らす人々の濃く深い繋がりがよくわかる一冊です。

近隣との揉め事があればお寺へ、体調を崩せばお寺へ(アーユルヴェーダや伝承医療の施術可能な僧医がたくさんいるようです)、人生相談の為お寺へ(スリランカに古くから伝わる占星術だってお手のもの)、なんとなく不安を抱えたらお寺へ、身体と心の健康を保つ、つまりは物質的な豊かさではなく、本当の意味でより豊かに、より良く自分の生を生きる為に欠かせない拠り所として、村の中心部に寺院が存在するようです。

東日本大震災後にこの本を読んだ事は、タイムリーだった気がします。
私達のエネルギー消費はこのままでいいのか、物質至上主義は、どこか違うのではないか、生き方をみつめなおそう、その様なことを皆さんお考えになったかと存じますが、私もそうでした。

日本はいわゆる経済的な発展途上国に多額の援助をしています。スリランカもそういった国の一国ですから、どこか「遅れている国」と見ている人も多いかもしれません。
実は全くもってそんな事は無く、この国にお釈迦様がいらした時代から続く仏教の在り方や珠玉の智慧、自然との繋がりなどから、私達が今後の生き方を考える上で学ぶ所は多いはず……と私は一人確信し、妙に興奮してしまいました。

ただ、国民の約6~7割が敬虔な仏教徒で、古くからの慣習が途絶える事なく続いているスリランカと、日本とではわけが違います。

「お坊さんが、お寺が努力しないから悪い!」「人々が経済成長と共に不信心になったのが悪い!」などと言い合った所で、時代の流れというのもあるわけで、どちらのせいでもあれば、どちらのせいでもありません。
私は、人々が求めた時にこそ、手を差し伸べられる僧侶や寺院がそこに“ある”という事実が大切なのだろうと思っています。求めない人にいくら「仏教の教えに倣うといい」「スリランカの仏教や智慧から学ぶところがあるよ」と勧めたところで、右から左だろうと思うのです。

ですが、そうは言っても、日本人には、他国の文化や宗教の慣習をも柔軟に受け止め、日本風のものにしてしまう素晴らしい能力がありますから、スリランカからもその智慧を“うまく”学んで取り込んでゆければいいなと思った次第です。
職場の周りにいる和尚さん方も、誰も「仏教徒になれ」「禅宗に帰依しろ」などと一言も仰っていません。
仏教やお寺が、自分からは遠い存在になっていたとしても、何か求めた時には、その古くからの教えから、必ずや自身の糧となりうるものを掴めるはず、と思うのです。
我が研究所も、その“何かを求めた時”の皆さんの心に添えるよう、つとめてゆきたいと思っています。

*話が違う方向へいきましたが、この本には他にも魅惑的なポイントがたくさんです。リンクしましたAmazonの皆さんの感想も是非ご覧になってみてください。

by admin  at 07:30
コメント
  1. こんにちは。岩瀬幸代です。

     素敵な本の紹介文を書いてくださり、どうもありがとうございます。

     私は今、取材のためにスリランカにいます。5月の満月は、お釈迦様の生誕、成道、涅槃を祝うお祭りが例年行なわれ、お寺はもちろんのこと、沿道や、各家庭にもおおくのランタンが飾られます。今年は、悟りを開いてから2600年の節目に当たるため、いつも以上に華やかなイベントとなりました。今はちょうど一段落したところです。

     しかし元は仏教行事でも、今やほぼお楽しみイベントです。時々、がっかりするような若者にも出くわします。

     この国で仏教が原始的な姿で守られてきたのは、内戦が続いていたからという理由が背景にあるでしょう。もちろん内戦が終わったのは、とてもいいことですが、経済発展にあわせて少しずつ人々の心が変わって行くのを感じます。

     ちょっと寂しいです。いつまでも、目に見えないものを信じることができる彼らでいてほい。。。。と切に願うのです。

     さて、次の本は何を書こうか、と模索しながらこちらで滞在しています。2冊目の本は、ご指摘くださったとおり、日本の消費社会、経済至上主義の現状に疑問を持った方に、読んでいただけたらうれしいです。単なる旅行記としても、あるいはスリランカ仏教を知る手がかりとしても楽しく読んでもらえると思っています。

     これからも、何かしら皆さんにお伝えすることができれば幸いです。どうぞよろしくお願いします。

    by 岩瀬幸代  2011年5月26日 16:49
  2. 岩瀬さん
    御自らコメント頂戴し、恐縮です。ありがとうございます!

    経済発展してゆく国をみて、私達日本人は勝手なもので、「今までのままであってほしい」と、自分たちが失ったものを、今度は彼等が失う事を危惧して言ってしまいますね。私もアジア各国をよく旅行しているので、そう思ってしまいます。

    私達が失ったものをスリランカから学ぶ事もあれば、失ったからこそ大切にしてほしいと、私達からスリランカの人々へうったえかける事もできるのかな?!などと考えたりします。

    岩瀬さんの本がスリランカでも出版されたらいいのになと思います。自国の素晴らしさをかえりみる機会になるのにな…と。

    新刊、楽しみに待っていますね!

    お気をつけてご帰国下さいませ。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。

    by 禅文化研究所 川辺  2011年5月27日 09:23
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