トップページ » 2011年4月 7日

『禅文化』219号 技を訪う -ズーセス・ヴェゲトゥス-

日々の生活で出会った素晴らしい様々な“技”を、季刊『禅文化』にてご紹介しています。
本ブログでもご紹介させていただきます。
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季刊『禅文化』219号より
“技を訪う―ズーセス・ヴェゲトゥス”  川辺紀子(禅文化研究所所員)

 海外から日本に入ってきて、時と共に“日本風”に独自の変化を遂げるものは少なくない。ドイツ菓子バウムクーヘンもその一つだ。以前、ドイツで食べた物とは似ても似付かぬ日本のそれには、正直、少し落胆していた。
 クリスマスの頃だったろうか。不思議なバウムクーヘンに出会った。実に美味しい。聞いたことのない店名、“ズーセスヴェゲトゥス”をネットで検索してみると、ホームページが見つかった。ズーセスはドイツ語で甘いものを意味し、ヴェゲトゥスはラテン語で野菜のこと。バウムクーヘンのみならず、季節の野菜を使ったキッシュなども販売されているようで、私がいただいたショコラスパイスバウムクーヘンは、冬季限定の味のようだった。

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ドイツ菓子のマイスターブリーフ

 店の主は森美香さん。ホームページの記述から、彼女がドイツで修業をし、ドイツ菓子マイスターの資格を持っておられることもわかった。たまに更新されるブログを覗くと、師事する茶道の先生の言葉も書かれている。「あなたの心を今ぐるぐるに縛っている鎖は、いつか必ず、しかも一瞬にしてはずれる時が来ますよ。それまで待ちましょうよ」。私は、瞬く間に惹かれてゆき、彼女のブログの更新を楽しみにするようになった。いつかお会いしたいなと思っていたが、ある日、友人のために菓子を持参しようと思い立ち、お店に伺う機会が訪れた。
 彼女の第一印象をどう表現したらよいのか。一人で立派にお店を経営されているわけだが、若い学生さんのように溌剌としてみずみずしい。こちらを真っすぐに見つめて話される瞳から、好奇心の強い人であろうことが伺えた。この日は少しお話をして店を後にしたが、その後もどうしても彼女のことが気になる。やはり、取材にゆこうと思い立ち、手紙を出したら、快諾してくださった。

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by admin  at 07:30  | Permalink  | Comments (0)  | Trackbacks (0)