トップページ » 4.スタッフ便り » 映画 "おくりびと"

映画 "おくりびと"

映画 「おくりびと」

このブログでは、今のところ「映画 "禅ZEN"」への記事のアクセス数が多いので……、というわけでもないが、またまた映画のお話。

タイトルにある「映画 "おくりびと"」を、今頃になって観にいった。封切り当初からちょっと気になっていたのであるが、基本的にあまり邦画を観ないという性格のため、アメリカのアカデミー賞外国語映画賞部門にノミネートされたことを知って、慌てて行った次第である。

お恥ずかしい話、実はかなり泣かされてしまった。だが暗いだけの映画で無く、笑わせるところもあって、期待以上の上出来作品。

私も貧寺の住職であるから、檀家が亡くなると枕経に向かい、亡くなったばかりの故人に手を合わせることがある。
その人をよく知っている場合もあれば、そうでない場合もあるが、一様に「一生をお疲れさまでした」という思いをもって、枕経の前にお顔にかかった白い布をとって合掌することにしている。

そして、その後、私が帰山したあとに納棺が行なわれており、次に出向いた通夜の時には、故人は既に棺の中ということになるのだが、その私たち僧侶が知らない間(中には立ち会っている方もおられるかも知れないが)に行なわれている、納棺師の仕事を見ることができた映画だ。

精しいあらすじは述べることもないので割愛するが、納棺師の立場はもとより、そのおくりかたを受けた遺族の感謝の言葉や様子をみて、人をおくることを担っている私たち僧侶としても、今一度、考え直さなければならないものだと感じた。
おくられる故人はもとより、おくる遺族の気持ち、どちらもが納得できる葬儀がしたいと思う。

主演の本木雅弘は、この映画の原案を10年も暖めてきて役に臨んだと聞く。十分にこの納棺師という、ひとをおくる刹那に生きる仕事を表現していたと思える。
アカデミー賞にノミネートされてしかるべき作品だ。
知人のアメリカ人に聞いたところ、アメリカでも、Undertakerといういわゆる葬儀社が、こういった仕事をするようで、やはりお化粧をしたり体を拭いてあげたりして棺に納めるそうだ。日本と同じく、昔は家族が行なっていたようだが。

さて、当初の予定では、昨年9月から封切りで既に上映を終わっている映画館が多かったはずであるが、ノミネートされたためか、上映期間を延長したり、あらたに上映を始めた映画館も多いようなので、まだの方は是非見に行かれては如何だろうか。

余談だが、映画"禅 Zen"で唯一好演技だったと思った笹野高史が、この映画にも出演して、またなかなかいい役を演じている。そして、じつは「おくりびと」の一人である彼の言葉も重かった。


東京国立博物館 『妙心寺展』 入館者数七万人突破!坐禅会、法話などのイベントもあります!
禅文化研究所の書籍も販売中。是非お手に取ってご覧下さい。
妙心寺展

by admin  at 08:30
コメント
  1. 私も昨年、封切日に行きました。
    父役の故原田芳雄さんの亡くなってからの封切映画でしたしその事も話題でしたので高校生の息子と観に行きました。
    銭湯のおばさんや、ニューハーフの「付いてます」のところは笑ってしまいました。
    奥さん役の広末さんでなく松たか子さんだったら、又は、松島菜々子さんだったらどんな感じかなと思いました。
    予断ですが、2年くらいまえに「舞妓はーん」に最後の映画出演でした。故植木等さんの印伝かなんかの手提をもって祇園を歩くシーンさまになってましたね。邦画大好き。洋画も大好き。

    by 209  2009年2月19日 11:16
  2. 209さま。いつもコメントをありがとうございます。
    なかなかの映画ファンのご様子ですね。
    なるほど、奥さんが松たか子さん、いいですねぇ。奥さん役を誰にするかで、いろいろあったようですが。

    あまり映画館に足を運べない私が、このところ二本立て続けに見ましたが、「私は貝になりたい」に行きそびれていたことを残念に思っています。
    また、ちょっと娯楽に走りますが、「戦国 伊賀の乱」。
    文庫本で忍者者を読みあさっている私としては、気になるところです。今のところ、ロードショー情報がないので、見られるかどうかわかりませんが。

    by 禅文化研究所  2009年2月19日 16:50
  3. この映画で納棺師という仕事を初めて知りました。以前読んだ看護師さんが書かれた本では、その病院では最期をお世話した看護師さんが、ご遺体の清拭、着替え、エンジェルメイクをするそうです。なるべく故人がいつも使っていたお化粧品でメイクしてあげたいというお話でした。女性としましては、やっぱりメイクと遺影は大いに気になりますね。
    山崎努さんが存在感があって個性的で大好きです。そういえば彼は「お葬式」(伊丹十三監督、1984年)にも出演していましたね。
    また、本木雅弘さんは「ファンシイ・ダンス」(周防正行監督、1989年)でお坊さん役でした。コメディですがご覧になったことありますか?

    ところで、今までで一番心に残っているお葬式は、若くして急死した従兄の告別式です。お経を上げながら和尚様が泣き出されたのでちょっとびっくりしたのですが、この方は従兄の高校の同級生だそうで、「未熟なことで恥ずかしい」とおっしゃいましたが、私はなんだかうれしかったです。従兄も喜んでいたのではないでしょうか。

    by カピバラ  2009年2月20日 12:09
  4. カピパラさん、コメントをいただきありがとうございます。
    看護師さんもご遺体の清拭などされているように聞いていますが、以前、当時の私の上司がご自身のご母堂を亡くされたときに、納棺師のことを大変評価されていて、その分、葬儀導師の未熟さが目について仕方なかったと言われたことがあります。
    その時から、心のどこかに残っていたのが納棺師の仕事で、僧侶の未熟さだったような気もします。
    今一度、我が身を見直して勤めたいと思っています。でも私自身、お世話になった檀家のお婆ちゃんを送ったりするときには、どうしても涙腺が緩んでしまう未熟者ですが。
    「お葬式」も記憶に残る映画でしたが、人を送るという面での厳粛な感覚は、今回の「おくりびと」の方が遙かに強かったように思います。
    「ファンシイ・ダンス」も見ました。少し自分に絡めて見ていたような記憶があります。

    by 禅文化研究所  2009年2月20日 12:40
  5. 昨夜「おくりびと」を見ました。1,200人収容の会場が、殆ど満員の盛況でした。
    感想は「非常にユニークなストーリーで、泣き笑いをしました。生と死を正面から見つめ、向き合う内容でしょうか。本木さんが奏でるチェロの音色、(上手い?)欧米並みのオーケストラの演奏、いい映画というより、いろいろ考えさせられる映画」の印象でした。世界の人々には、新鮮な印象を与えたと思います。

    by 三瓶  2009年3月15日 15:55
  6. 三瓶さま
    コメントをいただき、ありがとうございます。
    アカデミー賞を受賞したとき、私の感動は間違っていなかったんだと思ったのと、自分のことのようにうれしく思った次第です。
    その後、何度かテレビでも、この映画をめぐっての番組がありましたが、本木さんは、ロケ中も毎晩チェロと納棺師の所作の練習を怠らなかったということでした。
    映画で本木さんがチェロを奏でているシーンの音は、本木さんの音ではないとのことでしたが、本人の音かと思えるほど、ウソっぽい映像でなかったのは、彼の真面目な努力の成果ですね。
    本当に素晴らしい映画でした。

    by 禅文化研究所  2009年3月16日 09:37
コメントを書く




保存しますか?


(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)


画像の中に見える文字を入力してください。