公益財団法人 禅文化研究所

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刊行普及

白隠禅師自筆刻本集成

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日付 2002/6/27
詳細

白隠禅師自筆刻本仮名法語を完全復元、以てその法灯を永劫に伝える-

本特別事業は平成7年より7年計画により遂行されました。

hakuin_syusei.jpg宗門中興の祖、五百年間出と称えられる白隠禅師が、「衆生無辺誓願度」の願輪の下よりあらわされた著作は、漢文語録六種十九冊、自筆刻本仮名法語二十四種二十九冊にのぼります。そのすべては、真箇、禅師の煖皮肉にほかなりません。
日本臨済宗は、今やことごとく白隠下となりました。禅師の残されたこれらの著作こそ、まことに真の法財と言うべきものであります。
なかでも、白隠禅師みずからの筆跡を梓に刻んだ自筆刻本仮名法語は、残された原版本も少なく、散逸の危機に瀕しているのが現状です。
現存する最良の版本を元に、旧来の伝統的な木版技術によって忠実に模刻し、長期保存に耐え得る和紙に刷り、禅師の息吹を伝える往時そのままの木版本として完全に復元したのが、本集成であります。
仮名法語 全十帙十八冊 各冊に別冊注釈書が付く。
語録 全二帙十二冊

総十二帙三十冊、別冊十八冊
巻子 一巻
仕様 本文紙 特漉因州紙

装丁  蝋箋紙仕上

総桐製収蔵函入

趣意

宗門中興の祖、五百年間出と称えられる白隠禅師が、その八十四年の生涯にあらわされた著作は、実におびただしい量であります。禅師が生存中にみずから刊行されたものでも、漢文語録、六種十九冊、そして禅師が親しく筆を執って書かれた自筆刻本の仮名法語は、実に二十四種二十九冊という数に上ります。その殆どが、或いは檀越の資助を得、或いは禅師みずからが費を拈出され、艱難を経て刊行されたものであります。これらはすべて禅師の「衆生無辺誓願度」の願輪の下より出でたものであり、真箇、禅師の暖皮肉に他なりません。本朝二十四流の禅は、今やわが臨済宗に於ては、ことごとく白隠下となったのでありますが、この禅師の残された語録著作こそ、まことに法財と言うべきでありましょう。
明治以降の白隠禅師著作の整理刊行の歴史を見るに、明治三十五年には『白隠広録』が刊行され、昭和十年には『白隠和尚全集』の刊行が実現いたしました。この事業に奔走された先人の労苦はまことに多とせねばならないところであります。
『白隠和尚全集』の刊行より既に六十年。飜って思うに、この間、如何なる取り組みがなされて来たか。代表的な仮名法語数種を中心に幾種かの出版物が見られますが、膨大な仮名法語の全体から見れば、まだほんの一角に過ぎないのであります。また、『荊叢毒蘂』こそは禅師著作中の雄であり、白隠語録ともいうべきものですが、これにいたっては実に訓読すらもなされていないのです。白隠、白隠と喧伝される音量に比し、如何せん、その業績は必ずしも十全なものとは言えないのであります。宗門学会を挙げて、忸怩たるを禁じ得ないのであります。
この時に当たって、白隠禅師著作を総合整理し、当今および将来の白隠禅師研究に資し、もって顕彰の一端たらしめんと企てる次第であります。
その一。白隠禅師自筆刻本の収集と、木版による復元。従来の全集編纂では、禅師みずからが書かれた自筆本が、必ずしも忠実に飜字収録されているわけではありません。これらの仮名法語が、主として在家に施与されたものであり、現在までに残されているものは極めて稀少であることも、その一因でありましょう。
既に、禅師の著作を漏れなく収拾することはかなり困難となっており、今、徹底した資料収集をせねば、遠からず散逸の憂き目に遭うことになりましょう。しかし、幸いに禅文化研究所では開設以来、収集蓄積された関係資料があり、この際、さらにいっそう資料を充実しつつあります。そして、そして、禅師自筆刻本を中心に往時そのままの木版として完全復元し、梓に壽(いのちなが)からしめ、これを以て篤志寺院に御架蔵願い、禅師の暖皮肉を永劫に伝存せしめんと願うものです。文化財の保存伝承もまた、寺院の使命の一つでありましょう。寺院に於て御架蔵いただくことによって、禅師の主要著作は、第一次資料として、必ずや三百、五百年の後までも伝えられると信ずるのであります。
その二。漢文語録の訓註語釈と仮名法語の現代語訳。禅師の著作は蔵秘されるだけではなりません。禅師みずからが書き、みずから出版されたのは、利他為人の一願より他に目的はないからであります。その膨大な著作を精査することによって、混迷する現代のさまざまな課題に関しても、必ず光明を照射するものがあると確信いたします。
そういった研究のためには、単に学会に依頼して事足れりとするのみではなく、宗門からの積極的な参加も必須であることは言うまでもありません。これについては、既に関係各方面にお願いして来ているところであります。
今や活字離れの時代だと言われます。ましてや、漢文で書かれた祖録においてをやであります。しかしながら、漢字の祖録を離れての禅宗はありえないのであります。膨大な著作の精神を現代に生かすための仕事は、まことに時間を要する、容易ならざる事業です。しかし、いま着手しておかねば、事はいっそう困難になるばかりです。いま二十一世紀を目前にし、是非ともこの事業を完遂し、将来の宗門の後昆に遺し、さらに宗学の向上を念願するものであります。そういた、将来の宗門を担う若き宗門人を視野に入れた、付帯事業もありますが、これについては計画概要をご参照下さい。
さて、本事業の実現のためには、資助、調査、研究等、あらゆる方面にわたって、宗門の御賛助を得ずしては、無事円成はとうてい望み得ないところであります。
何卒、微衷おくみとりいただき、白隠禅師の流れを汲む現代宗門の力をここに結集賜わり、越格なるご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります。

財団法人 禅文化研究所
白隠禅師自筆刻本集成刊行会

収録著作内容

〔第一帙〕さし藻草(3冊)
〔第二帙〕八重葎 巻之一 高塚四娘孝記(2冊)
〔第三帙〕八重葎 巻之二 延命十句観音経霊験記(3冊)
〔第四帙〕八重葎 巻之三 幼稚物語(2冊)
〔第五帙〕遠羅天釜(2冊)
〔第六帙〕夜船閑話(1冊)
〔第七帙〕新談議(1冊)
〔第八帙〕辺鄙以知吾(2冊)
〔第九帙〕兎専使稿(1冊)
〔第十帙〕於仁安佐美(1冊)

(別巻)
〔第一帙〕荊叢毒蘂(6冊+補遺)
〔第二帙〕槐安国語(5冊)

(附録)
〔巻子〕主心お婆々粉引歌(お多福女郎粉引歌)

編集委員会

委員長:加藤 正俊
主 編:芳澤 勝弘
委 員:早苗 憲生・道前 慈明・藤田 吉秋