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所蔵墨蹟の修復

 

blog__BKL5910.jpgこちらは禅文化研究所の資料室にある閉架図書室です。弊所にはこのように、開所以来、少しずつ数を増やしてきた所蔵書画軸があります。弊所の創立五十周年記念に発刊した『禅の至宝 禅文化研究所所蔵品図録』には、それらをすべて網羅しました。
しかしながら、中には、折れがあったり虫損があったりする軸の状態の悪いものがあり、近年、事業の一環としてこれらの修復も順次行なってきています。

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たとえば、上のこの墨蹟、白隠禅師の高弟である霊源慧桃禅師の書「應無所住而生其心」(出典:『金剛経』)ですが、ご覧の通り本紙に折れがあったり軸にシミがあったりします。函も防虫性の高い桐製ではないですし、軸の外側もかなり痛んでいます。

blogDSC04426.jpgそこで、このたびの修復の対象として、表具をしなおし、太巻きにして函も換えるということになりました。同じように修復を行なうものが今回は8本。先般、それらが修復されてきました。

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blog_BKL5905.jpg折れもきれいに修復され、表具や函も一新。またこれで、長い時間、保存していくことが可能になりました。
禅文化研究所で行なっているデジタルアーカイブズ事業で調査させていただくときも、こういった、重要でありながら痛みのひどいものは調書に記し、最終的に所蔵者にもお知らせするようにしています。そうすることによって、徐々にでも所蔵品の修繕をすることができるようになり、ご好評をいただいています。

 

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サルが去る


20180328_MG_8241.jpg一昨日のブログにも書きましたとおり、先週末、京都の北嶺・比叡山延暦寺に行ってきました。標高850メートル近くもある山の上なので、午後になるほどだんだん冷えてきたのですが、あたりには杉の大木から黄色い花粉が舞う様子が。花粉症のスタッフには地獄のようでした。

それから、今回の訪問で驚いたエピソードがもうひとつあります。比叡山といえばサルが有名だという認識でいたのに、最近はあまり出没しないというではないですか。なんでも、シカとの勢力争いに負けてほとんど山を降りてしまったと。そういえば、あちこちにシカ除けのフェンスが張り巡らされています。

一見昔と変わらぬ自然を保ちつづけているように見える霊山においても、じわじわと変化が起きているのだなと思わされた一日でした。改めて、皆さまの周りではいかがでしょうか。

 

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春まだ浅き延暦寺

 

blog_hiei.jpg桜の開花がニュースになった週末、京都の北嶺・比叡山延暦寺に季刊『禅文化』の取材に行ってきました。写真は、東塔の「阿弥陀堂」。また東塔の大講堂の中には、比叡山出身の祖師方のお像が祀られており、圧倒されます。

blog_MG_8192.jpgこちら横川の「四季講堂」は、日本天台中興の祖・慈恵大師良源(元三大師)を祀るお堂で通称「元三大師堂」。おみくじ発祥の地として知られます。(ちなみにこちらのおみくじは、修行を重ねた僧侶しか引いてはいけないという厳粛なもの。参拝者は、お願いして代わりに引いてもらいます)

blog_MG_8256.jpg西塔エリアにある、開祖・伝教大師最澄の廟です。法要の際は、向かいの拝殿まで大師の魂にお出ましいただくのだとか。ここは山内でも特に冷え込むエリアで、あまりの寒さに時計が逆回りしてしまうこともあるそうですよ。ここの守りをされる方は、毎日夜明け前から素足で場を整えられると伺いました。

blog_MG_8281.jpg同じく西塔。回廊が繋ぐ「常行堂」「法華堂」は、通称「にない堂」として有名。力持ちの弁慶が中央の回廊を担って両方のお堂を持ち上げたという伝承があります(実際のところは滋賀と京都の境にあたるために回廊が架けられている……などの説が有力とのこと)。個人的には、それぞれ異なる堂籠り修行の場が、行き来もないというのにわざわざ繋がれている点に興味を持ちました。

blog_MG_8201.jpg標高850メートル近くもある山上一帯に漂っていたのは、まだまだピリッと冷たい冬の空気。私は初めて知ったのですが、「比叡」はもともと「日枝」と書いたそうです。生い茂る木々で、太陽の光も遮られてしまうくらいの環境を表すのだと伺いました。どの宗派も、修行の地に漂う凜とした空気にはただ息を呑むばかり。私も自分の持ち場でしっかり励もうと改めて思った次第です。

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研究所の花 2018/3

今年は桜の開花が早いと聞いたばかりなのに、一昨日の彼岸の中日には、東京や山梨でも積雪があったようで、驚かされますね。

近畿は寒くて風が吹きましたが、それほどのことでもなく、さて、今日からは春のセンバツ甲子園。全国から高校球児が甲子園に集まってきます。今年はなんといっても私の地元の滋賀県が3校も出場するという快挙。その中には私の母校も含まれていて、夏春連続出場となります。同窓生達で大いに盛り上がっているところです。

blog_2018-03-22-06.57.pngさて、昨日は久しぶりに研究所に花を生けました。というのも冬の間はほとんど花がなくて、仕方がなかったのです。最近になって冬枯れの庭や畑から、ムクムクと花たちがお目見えしてきましたので、お花係復活です。

blog_2018-03-22-08.47.jpgいつものとおり、玄関の掛け花入れから。こちらは白い水仙。水仙にはホントにいろんな種類があるようですが、これはオーソドックスなものです。そして、玄関正面には、ヒメリュウキンカとクリスマスローズで。

blog_2018-03-22-08.48.jpgヒメリュウキンカは、夜になると花びらを閉じますが、昼間は、ピカピカの黄色の花をほころばせます。

そして応接室の床の間。実際には、床の間というのも違いますけど、床の間のように扱っています。こちらにはユキヤナギと八重の水仙、そしてまたまたヒメリュウキンカ。

blog_2018-03-22-08.49.jpgお内仏のようにある、初代所長・山田無文老師の真前にも。こちらは黄色い水仙をお供えしました。

blog_2018-03-22-08.50.jpgさて、日曜日あたりから本格的に春らしくなるようですよ。季節の変わり目、体調に気をつけてまいりましょう。

 

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春のお彼岸

 

blog2018-03-17-10.41.42.jpg今年も春のお彼岸がやって参りました。境内にあるサクランボのなる桜の木はもう満開。今年もたくさんの実がなることでしょう。

自坊では春のお彼岸に永代祠堂施餓鬼をお勤めします。ちょうど本山からの定期巡教の時期ですので、毎年、法要後に布教師さまの御法話を拝聴するのも常となっています。

前日から準備に大わらわでしたが、花粉症の私にはこの時期の境内掃除は大変つらいものとなってしまっています。が、そうも言っておられず、初めて来られる布教師さま、そしてもう二度と来られないかもしれないわけですから、丁重にお迎えすべく準備を調えさせていただきました。

blog2018-03-18-10.30.jpg床の間には遂翁元盧禅師筆の達磨図をかけてお迎えです。

blog_2018-03-18-10.32.jpg永代祠堂施餓鬼ですので、回向の際には今までに祠堂料を納められた多くの戒名をすべて読み上げます。その数は800霊を越えていますので、それだけでもかなりの時間がかかってしまいますが、各家のご先祖様への報恩感謝として年に一度のことなので、がんばって読み上げることにしております。

さて、皆さんは、もうお彼岸のお墓参りを済まされましたか?

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圓福寺展に集荷

 

blog_MG_8146.jpg一昨日のブログ禅で書きましたとおり、まもなく「圓福寺展」が開催されます。そのために、昨日、圓福僧堂まで、花園大学歴史博物館のスタッフとともに、作品の集荷に行って参りました。

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老師から指示を出され、雲水さん達がすべての作品を出してきていただきました。

今回借用するのは81点となります。借用作品を一点一点確かめてから梱包作業に入りますので、朝9時半から始めても夕方までかかります。

一点ずつ出しては、調書に、折れや虫食いがないかや付属品などを記していき、終われば巻き上げて、日通の美術輸送の専門スタッフが丁寧に梱包していきます。そうしてそれを大きな段ボールに再梱包して運び出すということになります。

blog_MG_8132.jpg調査の度にいつも楽しみにしていた、雲水さんが作って下さる昼食。今回は、僧堂らしく釜揚げうどんでした。しかし、十何回も寄せていただきましたが、一度として同じものは出されませんでした。昼食はいつもスタッフ一同、大感激でしたが、これで最後です。

調査を学芸員たちにお任せして、私は展覧会の際にパネルで展示する僧堂の伽藍などを撮影に廻りました。

まずはいつも調査で使わせていただいていた、有栖川宮の御殿の外観から。

blog_MG_8113.jpgそして、こちらはその内部の見事な格天井です。

blog_MG_8130.jpgそして、歴代塔にもお参りしてきました。こちらは開創の斯経慧梁禅師の塔所です。

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写真を撮り廻っていると、日供合米から戻ってこられた雲水さんが、順次、方丈前で大きな声で開甘露門を唱えながら帰ってこられました。大声を張り上げて読経する様子が、まるで『雲水日記』の中の絵のようで面白かった(失礼)ので、こっそりパチリ。

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夕方5時半、すべての借用作品を積み込んで、圓福寺を後にしました。

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もうすぐ「圓福寺展」を開催します

 

blog_empukuji_B2.jpg当研究所が花園大学歴史博物館と共同で行なっておりますデジタルアーカイブス事業として、2016年11月26日~2017年12月20日までの足掛け15日間にわたり、圓福寺寺宝の調査を行なって参りました。

このたびその成果発表として、2018年4月3日より、花園大学歴史博物館に於いて、「2018春 圓福寺 ―京都八幡達磨堂 寺宝展」を開催できる運びとなりました。詳しくはこちらをご覧下さい。

圓福寺歴代住持遺墨など寺史関係資料のほか、宗般玄芳老師が帰依をうけた有栖川宮家ゆかりの品々なども展観し、圓福寺の歴史、宗風を概観します。また圓福寺の歴史のなかで育まれた中世から近代にいたる美術作品の優品をご紹介します。

どうぞ、皆様のご来場をお待ちしております。

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春の祈祷会

 

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二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」もすぎ、一気に春めいてきました。自坊の梅林の梅もどんどんと花を啓いていきます。

藪椿も陽に照らされてぽっこりと春の訪れを告げています。

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冬の間、なんにもなくなっていたような畑にもこうやって花が咲いてくれました。ただ花粉症の私には、5月頃まで気候とは裏腹に憂鬱な日々がやってきているのも事実です。この時期にはアレルギーのせいで咳喘息の症状も出てしまうのです。
皆さんは如何でしょうか。

3月には、もうすぐお彼岸もありますが、自坊のあるあたりはお彼岸法要の前から並行して、大般若祈祷会をお勤めするのが慣例となっています。大般若祈祷はお正月に、あるいは善月祈祷会といって正月、5月、9月の各16日に行なうのが法式上での通例ですが、もともと雪の多かった自坊の地域では、車の無い時代、お正月に雪のあるなかを徒歩で近隣のお寺に出頭するのは大変だったからでしょうし、お参りに見える檀家さん達のためでもあるでしょう。雪の降らなくなった3月、お互いに行き来しやすいこの時期に祈祷会をするのが慣例となったのではないかと思います。

S__14172167.jpgそういったわけで、3月は近隣のお寺に行ったり来て貰ったりと、しょっちゅう顔を合わせる機会が増えます。最近は若手の和尚も増えてきて、だんだんと顔ぶれが変わっていくのも面白いです。

先般は、自坊の大般若祈祷会をお勤めしました。この春から掛搭する若いお弟子さんたちも出頭してくださったので、12函ある大般若経だけでは足りず、少し帙を分配して14人の方で転読していただき、とても賑やかでした。今年の天下安全、五穀豊穣を祈ったのでした。

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田中義峰老師のご遷化

 

blog_萬仞軒1.jpg臨済宗の老師方の訃報が続きますが、岐阜県多治見市にある南禅寺派虎渓山僧堂(永保寺)の萬仞軒田中義峰老師が3月1日に遷化され、先日密葬に参列してきました。

田中老師は、昭和16年生まれ。南禅僧堂に掛搭後、臨済僧堂に転錫、その後虎渓山僧堂の中村文峰老師に通参され、その法を嗣いでおられます。
5年前に行なわれた、日中臨黄友好交流協会主催の日中禅僧交流では、中国の修行僧を僧堂で受け入れていただきました。

blog_萬仞軒2.jpg密葬は、虎渓山僧堂をはじめ南禅僧堂・臨済僧堂の会下、本山関係者ら200名の僧侶が出頭し、中村文峰南禅寺派管長導師のもと執り行なわれました。
春の雨が降り続く中、多くの方々に見送られての出棺でした。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
なお、津送は4月18日に執り行われます。

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三島龍澤寺へ

 

blog_MG_8015.jpg三寒四温のこの頃ですね。2月末のことですから、もう少し日にちが経ってしまいましたが、個人的な用があり、三島の龍澤僧堂へ参上し、松華室後藤榮山老師に相見して参りました。

先週末あたりから近畿も暖かくなり一気に梅も開花しましたが、すでに2月末でも三島は既に梅が咲き誇り、ぽかぽかと暖かく、さすがに静岡県でした。龍澤寺にはたくさんの梅の木があります。

blog_MG_8040.jpg制間ということもあり雲水の姿も見えない境内を、ご夫婦連れだって散策される方が数組おられました。ふとみると、その境内にある銀杏の木の下で、本堂に向かって坐禅をしているご婦人の姿がありました。

blog_MG_8043.jpg土曜日の昼下がり、静寂を求めてここに座りに来ておられるのですね。歩を進める足音さえ、そっと耳に触らぬようにと気を遣って通り過ぎたのでした。

じつは私の徒弟がこの春から、私がお世話になったこの龍澤僧堂に掛搭したいということで、前もってご挨拶にお邪魔したのでした。老師ももう米寿を迎えられていますが頗るお元気なご様子で安心しました。毎日、杖をついて境内や裏山を散歩しているとのこと。そして龍澤は作務も多いが、それで腰をしっかり鍛えられるから、しっかりと坐れるようにするのだとおっしゃっていました。

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妙心寺派のホームページがリニューアル

 

blog_20180305.jpg臨済宗妙心寺派の大本山妙心寺のホームページがリニューアルされました。

妙心寺派ホームページ委員会という組織があり、禅文化研究所として私も委員会のオブザーバーという形で今回のリニューアルに向けて関わってきました。制作を手がけたのは、臨黄ネットや禅文化研究所のWEBもお願いしている、Future Spirits社です。

以前のホームページは、一般参詣者に向けた内容も、妙心寺派の寺院に向けた内容も、檀信徒である花園会の方に向けた内容も一緒のページ内にあったのですが、今回のリニューアル前に、妙心寺派寺院や花園会に向けたものは、別ページとして妙心寺派宗務本所のホームページにまとめられ、大本山妙心寺のホームページ自体は、「禅の教え」「参拝・拝観」「体験」という3つのハシラを中心にコンテンツを整理し、すっきりと纏められ見やすくなりました。

また先にリニューアルされた英語サイトにあったフォトギャラリーも新たに設置され、妙心寺をビジュアルで紹介もされています。実はこのフォトギャラリーの写真を撮ったのは、ホームページ委員会の面々。私も撮影者の一人として関わったのでした。

今回のリニューアルでスマホやタブレットにも対応したレスポンシブ化も果たしてあります。
そういえば、ただ今、禅文化研究所のホームページのレスポンシブ化を行なっております。もうしばらくで完成します。

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宗門最長老師家 大井際断老師ご遷化

 

blog_IMG_5591.jpgわが臨済宗最長老の僧堂師家、大本山方広寺派管長の大井際断老師が、去る平成30年2月27日午前2時57分に、肺炎のため103歳にてご遷化されました。本日3月2日の11時から、大本山方広寺にて密葬が行なわれます。津送は5月25日(金)10時からとのこと。

大井際断老師は、大正4年、兵庫県西宮市のお生まれ。昭和15年、東福僧堂に掛搭し戦役を経られた後、東福寺の家永一道老師に参じて嗣法。花園大学教授を経て、昭和35年、大分・万寿僧堂師家、昭和50年、妙心寺塔頭東海庵住職を経て、平成2年、方広寺派管長ならびに僧堂師家に就任されました。
ドイツを中心にヨーロッパ各地での布教を行なわれ、また、「薪流会」総裁として社会活動にも積極的に関わっておられました。

禅文化研究所の第四回「禅文化賞」の功労賞を受賞されたのが4年前の2014年秋でした。その時、ちょうど100歳を迎えられ、その後も、現役師家としてつい2年ほど前まで雲衲をご指導をされていたのでした。

弊所では、季刊誌『禅文化』248号(2018/4/25発行)にて、数名の方に追悼文をお寄せいただくように準備を始めました。

老師の大きく高らかな声が今も耳に響いております。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

978488182248-thumb-270xauto-280_270x379.jpg老師ご生前の形骸に触れることができるDVDビデオ『禅僧が語る 天地一指』は禅文化研究所から。

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