麟祥院 -東京都文京区-
こんにちは。
本日よりまた、東京都文京区にあります、麟祥院さんにお邪魔しています。
東京はすでにソメイヨシノが満開です。
先週のお休みの日に、親友でもある土楽窯・福森道歩さんが、自身の窯にて窯焚きをするということで、見学にお邪魔させていただいていました。
以前、お父上・福森雅武先生の野焼きにもお邪魔し、あまりの迫力と、何もお手伝いができないふがいなさに打ちのめされ、立ち尽くしていたのを覚えていますが、久々の窯焚きにまた圧倒され、呆然とする私……。
何かさせてもらいたいと思っても、あまりに何もできなさすぎて、かえって邪魔になるのでは…と、見ている事しかできません。
そして以前と同じように「あぁ、私にこんなにも一所懸命になる瞬間があるだろうか・・・」と自身を顧みるのですが、今回は、「最初は邪魔になるだろうけれど、やらせてもらってみよう!」と、恐る恐る鉈での薪割りを。
「なんでそんな割りにくい木を選ぶねん…」と呆れられつつも(だって本当に全くわからないわけです…)、どのような木が割りやすいのか、少しずつですがわかってきます。
都会のサラリーマン家庭に育った私には、この年齢になっても何もかもが新鮮で、全てが初体験。
道歩さんと、お姉さんの柏木円さん(独立され、主に磁器を作っておられます)の働く姿を眩しく眺めつつ、まるで赤子のごとく何もできない私が、側でとても大切な事を一から学ばせてもらっています。
表千家の堀内宗心宗匠は、ご自身が堀内家を嗣ぐなどとは思われる事も無く(三男でいらっしゃいました)、京大にて物理学の研究をされていました。が、お兄様方の予想外に早過ぎる旅立ちに、ご自身が家を嗣がれる事となり、本格的にお茶の世界に入り修行をなされたのは、大学を卒業なさってからとなるわけですが、「かえって他の分野で学んだ事がお茶の世界への理解を深める事になりました」と仰っています。
私も、窯焚きにゆけば赤子ですが、今までの人生で学ばせていただいた色々により、赤子なりにも、彼女たちの働く姿を見ていると、この年齢だからこそ色々と理解できる事もあるわけで、宗匠のおことばを励みに、迷惑をかけながらも何らか気づいたり、掴めるものがある窯焚きには、是非とも今後も馳せ参じたいと思っている次第です。
そして、窯焚きにも、窯そのものの構造や、薪の入れ方、温度の調節、灰を被せて陶器に景色をつけたりと、もちろん色々工夫をするわけではありますが、温度が下がり、窯出しをするまではわからない、一種おまかせの世界です。
こうしてやろう!でなく、どこかで良い意味で解放されて、力も抜けて、おまかせできた時に、色んな目に見えぬものが動いて、結果としてそれが現れる世界。
もうこれは、物を作る時に限らず、私たち自身が、どのように生きていると、自己の本来の力が存分に引き出されるのか……というところまでを教えてくれるような気がしています。
尊い教え、尊い学びをいただく機会でした。
*今回の窯焚きでの作品は、東京・ほぼ日さんのTOBICHIでの展覧会(4/10~12)に出品されます。是非ご覧になってみてください。
Microsoftより次期Windowsとなる「Windows 10」が今夏に発売されるとのことです。
そして3月18日、「Windows 10」の日本語プレビュー版「Windows 10 Technical Preview Build 10041」が公開されました。
そこで、弊所より発売しております寺院向けソフトウェア「宗教法人管理システム 擔雪 II」と「宝物管理システム 禅の至宝」が「Windows 10」で正常に使用できるものか、動作テストを始めました。
まずはソフトウェアのインストールですが、何事もなく無事にインストールすることができました。ソフトウェアも問題なく起動できたので一安心です。
これが「デスクトップ」画面です。「Windows 8」では「スタート」ボタンが無くなりましたが、「Windows 10」では「スタート」ボタンが復活しています。
これが「Windows 10」の「スタート」画面です。「擔雪 II」をインストールすると、画面の左側にアイコンが表示されました。
ほんの少し操作しただけですが、「Windows 8」の不便な点がかなり解消されている印象を受けました。それと、アイコン(特にごみ箱のアイコン)のデザインが大幅に変更されています。
その他、Windows 8 同様、ファイル削除時に確認メッセージが表示されることなく、即座にファイルが削除(ごみ箱へ移動)されますので、大切なファイルを誤って削除しないよう注意が必要です。
ただし、ごみ箱のプロパティを開いて「削除の確認メッセージを表示する」にチェックを付けることで、確認メッセージを表示されるよう設定を変更することができます。
Windows 10 をご利用になる際も、初めにこの設定を変更されることをお勧めします。
「Windows 10」での動作テストはまだ始めたばかりです。さらに動作テストを重ね「Windows 10」の発売と同時に正式対応できるよう準備を進めます。
擔雪IIの情報はこちらからどうぞ
禅の至宝の情報はこちらからどうぞ
東京に参りましたらほぼ必ずや訪れる根津美術館。
リニューアル前には、「今のままがいい!」と頑なに思っていたわりに、スッキリ美しく、現代的ながらも趣ある建物になった今、既に以前の姿を忘れ(東京ということもあって足繁く通ったわけではないというのも理由にありますが…)、嬉々としてでかける薄情な私です。
人は良くも悪くも、忘れるものですね…。
さて今回は、菩薩さまにスポットが当てられていました。
衆生を救う為に奔走される菩薩さまとあって、菩薩信仰は根強く、「如来さまが好き」ということばはあまり聞きませんが、菩薩好きな方は多くいらっしゃるように思います。
装飾が美しい為、わかりやすく惹かれやすいのも、菩薩さま好きが多い理由でしょうか。
仏像はもちろんのこと、軸などの逸品もお目見えで、その精緻な表現に、見ている者は飽く事もなく引き込まれます。おすすめの展観でありました。
さらに、根津美術館に来て忘れてはならないのが、広大なお庭。そしてその随所に点在する石たち。
五輪塔、宝篋印塔、磨崖仏に朝鮮の石人・石羊、そしてつくばいに至るまで、石好きにはたまらない素晴らしいコレクションが惜しげも無く配されています。
2月に訪れた国東半島にのみ見られる形の宝篋印塔も…。
この蒐集を拝むだけでも、昔の実業家の趣味趣向、数寄者ぶりに圧倒されます。現代ではもうなし得ない事ですね。
展覧会のみならず、こちらも是非ご覧になってみてください。
おはようございます。
先週の椿が開きましたので、「椿しか生けたくない」という気持ちが変わって、一緒に水木を生けてみました。
まさに王道というべき組み合わせ。春のこの時期だけのお楽しみですね。
無文老師には、かわいらしい水仙を。
食べられるものを一緒に…というわけでもないのですが、なんとなく春!という感じ満載のこの二種。ふきのとうと菜の花です。
ぽっこりしているので、短くブーケのようにして生けました。
研究所はあまり日が当たらず、外がぽかぽかしていても寒いのですが、花々があると心あたたまります。
花便りでした。
おはようございます。
先週ご報告させていただきました、「遠諱報恩坐禅会-山梨・向嶽寺-」と同じ日に、静岡の方広寺(臨済宗方広寺派大本山)でも、報恩坐禅会が開催されていました。
詳しくは、臨黄ネットの遠諱ページに掲載させていただきましたので、こちらをご覧くださいませ。
「雲水さんは国の宝!」いいですねぇ……。
私も以前、どちらかの僧堂の雲水さんをおみかけした際に、繕いだらけで、藍の色がはげて麻そのものの色が見えてきそうなくらいの衣をお召しになりながらも、ぼぉっと光っているかのように美しく、ハッとした事が未だに忘れられません。
本人が意識して何かしようとせずとも、日々修行に取り組んでいる姿は、既にそれだけで我々に大切な事を気づかせる事もあるのですね。
また、遠諱報恩坐禅会のご報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
*記念企画もご予約承り中です!
臨済禅師・白隠禅師の遠諱にちなんで、各地の本山や僧堂にて、一般在家の方を対象とした坐禅会を開催する事となり、まずはその皮切りとなる、山梨は向嶽寺(臨済宗向嶽寺派大本山)での坐禅会が、3月15日に開催されました(同じ日に方広寺でも開催されました、後日ご報告します!)。
加担(手伝い)に行っていた研究所職員の報告を掲載しておりますので、遠諱ページのこちらをご覧くださいませ。
坐禅、つまりは自己をみつめるというのは、時には嫌な自分に直面したり、苦しい事も多々ある事と存じます。ですが、目をそむける事なく、自身をみつめ直してみたいと参加される皆さまに、頭が下がる思いです。
いただきました御縁に感謝し、こちらも万全の体制で皆さまをお迎えできるよう心して参ります。
全国での坐禅会に加え、5月には遠諱記念企画も東京にて開催。
あわせてご参加、お待ち申し上げております。
花だよりです。
椿のつぼみを一輪生けてみましたら、それ以上生ける気がしなくなりました。蕾からのぞくピンク色がなんともいえぬ生命力を感じさせます。
クリスマスローズはうつむき加減でしたので、どうかなと思いましたが、案外かわいらしくおさまっています。無文老師に。
家では、研究所で生けたあまりをいただいて随分前に生けた梅と蕗の薹がまだ頑張っています。
春の光がよく映えるガラスに。蕗の薹は毎日ぐんぐん伸びますので、カットが必要です。
小さな草花からも、春の生命力を存分に感じさせてもらう毎日です。
お水取りも終わり、彼岸に入りました。本格的に春到来!でしょうか。
とはいえ、なかなか一度には暖かくなってはくれませんので、どうぞご自愛ください。
おはようございます。
大分の寺社(宇佐神宮・真木大堂・熊野磨崖仏)をご紹介しておりました、大分は国東半島六郷満山シリーズ。
本日は天念寺です。やはりこちらのお寺も、平安鎌倉時代に修験道を重んずる天台寺院として栄えたようです。
山の断崖に沿うように作られたお堂。茅葺きも崖に沿い、それは見事。このようなお堂を拝見するのは初めてです。
こちらのお堂(講堂)では、毎年旧正月に修正鬼会(国指定重要無形民俗文化財)が行なわれます。
千年以上もの間、近隣の六郷満山の天台寺院住職たちにより守り伝えられた儀式。
今年の修正鬼会は2月25日だったようで、松明を作っておられた村のおじさん達が「25日においで~」と。私は22日までの滞在でしたので残念ながらお邪魔できませんでしたが、これは是非とも一度鬼会の日に参拝してみたいものです。
豊後高田市のHPに、修正鬼会の画像が載っていました。是非ともご覧になってみてください。
川中不動。修正鬼会の最初にこの川へ入り、身を清めるようですね。強い力で加護してくださりそうです。
講堂やお不動さんを堪能し、帰ろうとしましたら、松明を作っていたおじさんが「ここ来たらあれ見なきゃ~、見える?」と…。
無明橋。修験道の行場でもあるお山が、天念寺の後方に。鎖場をゆくと、あの橋を渡る事になるそうな。
絶壁を登った頭頂部に、なにやら祠らしきものも見えていますね。
禅の修行も興味深いものですが、密教の修行もまたしかりです。
おはようございます。
平成28年に迎えます宗祖臨済禅師の1150年遠諱。そして、平成29年に迎えます日本臨済宗中興の祖、白隠禅師の250年遠諱に向けまして、様々な催しを開催させていただいております。
昨年は、「禅って何?」をテーマに、このような講演会を開催させていただきましたが、この度は第二段としまして、もっと皆さまに参加していただけるような企画を色々と考え出しまして、5月31日(日)に、六本木アカデミーヒルズにて、【遠諱記念企画】を開催致します。
◆「禅の流れ」という題名にて、臨済禅師から白隠禅師へと連綿と受け継がれてきた禅の歴史を、花園大学教授でもある、安永祖堂老師が教えてくださいます。学生になった気分で、禅の歴史を学ばれてはみませんか?
◆「禅って何?」では、臨済僧堂の阿部宗徹老師と、阿川佐和子さん、そして坐禅のご指導でも有名な平井正修師(全生庵住職)の対談が。阿川さんといえば、鋭い質問が来そうですね?!どんな会話が繰り広げられるのでしょうか、私も楽しみです。
◆そして、「延命十句観音経写経」では、なんと円覚寺派管長・横田南嶺老師が直接ご指導くださいます。今や日曜日の円覚寺での法話をご担当される日には、廊下まで人が溢れるほど。遠くに老師を仰ぎ見ながらお話を拝聴されている方も多いのでは?!
この日はお近くにご指導いただけるまたとない機会です。
◆体験講座としては、やはりなんといっても、「坐禅」ということで、坐禅の講座と、玄侑宗久師(福聚寺住職、作家)による、「白隠禅師の瞑想について」の講座を設けさせていただいております。心や身体のバランス、調子を整えるのに最も有効といっても過言では無い坐禅の智恵、エッセンスを学んでみませんか?
さらに、無料体験として、禅僧との1対1の対話コーナーも設けております!面白い事になりそうです!
詳細はこちらのページをご覧になってみてください。
チケットはローソンチケットにて、5月30日(土)(23:59)まで販売させていただきます。
各講座のチケットが購入できるのはローソンのみです。あらかじめローソンにてご購入の上、ご来場ください。
□ インターネット予約はこちら (PCモバイル共通)
□ ローソン店頭「Loppi」で直接購入(各講座のLコードは上記記載)
□ 電話予約(24時間受付)0570-084-003(各講座のLコードは上記記載)
皆さまのご参加、お待ち申し上げております。
本日は催しのお知らせです。
3月18日より名古屋の三越にて、京都の工芸作家による合同展覧会が開催されます。
季刊『禅文化』に季節の切り絵をご提供いただいている、切り絵作家・田中道男さんも出展されます。
田中さんの切り絵は「絵画」「工芸」「写仏」の三つに分類されていて、基本的に“一品モノ”となる「絵画」はとても密度が高く、素材も吟味されているそうです。今回は、クラフト市と銘打たれてはいますが、そんな「切り絵絵画」の大作も展示されるとのこと。
禅宗寺院を取り上げた作品も多い田中さんですが(高桐院さんのお玄関にも飾られていました!)、色や紙の質感、立体感などをお伝えできないことを常々心苦しく思っておりました。和紙の奥深さを再発見できる機会にもなると思います。お近くの皆さま、ぜひお立ち寄り下さい。
原稿の校正をお戻しいただいた際、添えられていた絵手紙です。お忙しいなか執筆をお引き受けいただくだけでもありがたいのに、このお心遣い……。
直接お目にかかることがなくても、こんな風に遣り取りの中で著者のお人柄に触れて敬慕の念を抱かせていただく場面がとても多いのです。
もちろん、電子メールがいけないと言うつもりなど全くありません。メールにおいても同じ。何と素敵な言葉を選ばれるのだろうと心が温まる瞬間が多々あります。
いずれも「ちょっとしたこと」なのですが、この「ちょっとしたこと」が、真似しようと思ってもなかなかできませんね。メッキは所詮メッキ。無垢な人柄は、一朝一夕に作られるものではないのだなあと改めて思います。
せめて見習う心がけだけは(!)忘れずに。
おはようございます。
麟祥院さんでの宝物調査、つづいております。
あまりに美しい椿がたくさん咲いているので、まずは麟祥院椿図鑑を。
椿の種類は2000以上もあるといわれ、さすがに私も数種類くらいしかわかりません。
そして、お昼をいただきに外へ出たりするのですが、すぐ近くにとても気になるたたずまいの和菓子屋さんが。
壺屋さん。屋根のところにも、のれんなどにもツボツボの紋が。これは気になる!と、中へ入ってみますと、壺の形をした最中や、ツボツボの形をした最中が。ほっこりするような雰囲気なのですが、職人の手仕事のきっちり感もあり、一目で気に入り、ホテルでいただこうと買って帰ってみました。
どうですかこの感じ!? あんこがたっぷり入っていて、なかなかに食べ応えがありそうだと思いましたが、上品なお味ですぐにお腹の中へ。
こちらのお店、明治維新で大店が「徳川さまにお世話になったのだから」と店を閉じてゆく中、勝海舟に「みなが壺屋の菓子を食べたいと言っているから続けるように」と言われ、今に至るのだとか。
京都とはまた違った江戸の歴史を垣間見るようで、宝物調査の出張といえども、その他諸々学ばせていただいております。
おはようございます。
宝物調査にて東京に来ております。
くしくも東日本大震災より4年目となる今日をこちらで迎えますのは、本来どこにいようが心を向けることは可能ではあるはずですが、関西におりますのとまた違う緊張感を抱くような心地でおります。
鎌倉では、神道・キリスト教・仏教という3つの宗教が宗派を超えて集い、合同法要が行なわれるようです。臨済宗では、建長寺さん円覚寺さんが中心となっておられます。
様々な価値観の見直しを迫られた大震災。4年がたちますが、未だ困難な生活を余儀なくされている方々の平穏無事を祈るとともに、自身の足下をみつめ、日々のくらしを見つめ直す機会としたい所存です。
さて、話は変りますが、宝物調査は、東京都文京区にあります、春日局が開基の寺、麟祥院にお邪魔しております。
まさに都会のオアシスとでもいうのでしょうか、ビルに囲まれた中に静寂を保っております。
春日局のお寺、いたるところにこの紋が! 垣根やふすま、棚などに配されています。
さまざまな種類の椿を植えた垣根が。ちょうどどの木もたくさんの花を咲かせており、見頃となっています。
すばらしい宝物に眼福の極み。楽しみつつお仕事を進めさせていただいております。
境内のお庭にユキワリソウが!こんな風に自生しているのを初めてみました。昨日は雪が降りましたが、春の訪れを知らせてくれる花が咲いています。日に日にあたたかくなってゆくことでしょう。
最近、本の装丁というものに興味津々なのですが、そのきっかけとなった一冊がこちらです。
『正法眼藏註解全書』(正法眼藏註解全書刊行会/昭和31年)
菩提樹の下にお釈迦様。二匹の象の表情にご注目ください。これだけで、お釈迦様がいかに素晴らしい方なのかがよくよく伝わってくる気がしませんか。
背表紙です。もちろん箔押し。
見返しも凝っていまして……。これは『ジャータカ』でしょうか?虎の前に横たわるお釈迦様など描かれています。1点1点、絵柄が違うんですよ。
そして、ずいぶん後から気付いたのですが、なんと四天王がデザインされた「メモ」のページまでありました!(ページ合わせだとしても芸術的です)
本はもちろん内容が大切ですが、いわば舞台装置のような装丁の力も大きなものですね。弊所書庫に収蔵されている文献資料は、約37,000点。まだまだ素敵な装丁の本と出会えそうです。またご紹介させていただければと思いますので、宜しくお願い致します。
おはようございます。
上司の自坊より、梅に椿、ふきのとうが届きました。
また一気に春がすすんだようで、薄暗い研究所をぱっと華やかにしてくれています。
応接にはお気に入りの壺に、格好の良い枝振りの梅とクリスマスローズを。椿をあわせれば良いようなものですが、いつも同じだとつまらないので。
無門老師には椿を一輪お供え。一輪挿しは、唐銅のようにも見えますが、実は磁器に特殊な釉薬を施したもの(だったはず)です。
食べてよし、いけてよしのふきのとう。白い片口を花器にみたてて梅のつぼみと生けました。
まだ寒い空気の中、敏感に太陽の光の違いを察知してひょこりと顔をのぞかせる。春を告げるお役目を忘れない感心なお遣いです。
香合はこの時期ならではの椿。
備前ですが、「作家の方は椿がとても好きなのだろうなぁ…よく観察されているなぁ」と、毎年箱から出す度にしげしげと眺めてしまいます。
そんな作家さんの思いに触れる事からも、自然を慈しむ尊さを教えていただいています。
苦しみのあるときは観音を、
豊かなときには、鬼を心に宿せ。
自分自身を睨みすえよ。 冒頭より
被写体の奥底に潜む真実を追求しようとすれば、どうしたって生死(しょうじ)の問題を明らかにせねばならなくなった……。
インドはコルカタ、死を待つ人の家を訪れた事が機縁となり、ついにはチベット僧院にて出家までしてしまった報道カメラマン、野口法蔵さんの半生。
「日本にこのような方がいらしたとは……」と、目から鱗。夢中で一気に読み終えました。
彼が、会いたくても会う事が叶わなかったチベットのリンポチェ(高僧)は、もちろん悟った人として他の僧侶を教え導く人であるわけですが、「自分の中の仏が小さくなってきたなと感じたら、また行に入る」ということで、行に入っていらしたそうです。
悟後の修行を怠らない、常に自分自身を見据えていらっしゃるお姿がありのままに綴られていました。
これは野口さんもそうで、チベット僧となったものの日本に帰国し、好きな方ができて結婚。チベット僧としてはいられなくなった為、臨済宗妙心寺派の僧籍をお持ちだそうですが、五体投地400万回満行(一日約十時間五体投地をして、18年かかるそうな)された後も、いまだに毎日五体投地を続けられているとか。
それだけ繰り返すと、死ぬのがこわくなくなるそうです。どういった境地でしょうか。
たまに断食をする関係で色々と調べているうちに野口さんにたどり着きました。
長野で断食道場をされているようですが、予約はいっぱいで3ヶ月から半年待ちとか。
それでも、私が今もっとも会ってみたい方のお一人です。
大分神仏参拝の旅。
熊野磨崖仏、真木大堂に続き、全国に44,000あるとされる八幡さまの総本社、宇佐神宮です。
さすがに旅行で訪れる団体参拝者の数も多く、境内はにぎわっています。
美しい雰囲気の建物に惹かれ、人気の無い道をゆくと、能舞台でした。
調べてみますと、毎年10月20日に、風除報賽祭(ふうじょほうさいさい)と呼ばれるお祭が開催され、8月7日の風除祭と虫振祭にて豊作を祈願した者たちが、今度は豊作の御礼として奉納するものだとか。
「遠つ神笑み給み(とおつかみえみたまみ)」と唱えながら、太鼓や横笛に合わせて円陣を組んだ男性が躍るのだとか・・・。
どのような雰囲気なのでしょう。大陸から伝わった舞楽、能楽の基礎となるような素朴な踊りなのでしょうね。とても興味深いものです。
さらに、10月21日には、宇佐神宮御神能として、能楽が奉納されるのだとか。宇佐観世とよばれ、独特の能楽の文化がこの地方にもある模様。
能楽堂で観るお能はもちろん好きなのですが、やはり本来神社などで奉納されたのが元ですから、神域というに相応しい清らかな空気の中で拝見してみたいものです。
地方へ旅する時は、こういった奉納がある日を目指して参拝してみようと心に決めました。
毎月28日には、大徳寺のいくつかの塔頭で表千家の釜が掛かります(大寄せといって、誰でも参加できるお茶会があるのです)。先日もお邪魔して参りました。
若かりし頃より、28日が仕事休みの土日と重なればなるべく行くようにし、色々と学ばせていただいております。
この日はほぼ表千家のお席で、私が稽古している流派の先生方が釜を掛けられるわけなのですが、これまでに様々な流派のお茶会を経験してきて思うのです。
皆、茶の湯の稽古をする者は、どちらかの流派に属して点前を習っており、稽古を続けているのですから、恐らくはその流派が好きなのだと思うのです。もちろん私も、好きだからこそ続いています。
ただ、長く続けてきて、これこそほんとうの学びなのだろうな……と思いますのは、「結局は流派は関係なく、お茶をするその人自身がどうであるか…というところが一番大切なのだ」という事に気づいた事であります。
お茶を習おうとする方に、「どの流派がいいだろう?」と相談されると、昔は「そりゃあ表千家です」と答えたものですが、今は「私は表千家が好きだけれど、結局はどの流派であれ、師事する先生によると思う」と答えています。
これは、宗教でも同じなのだろうなぁ…などと考えています。
ただ、好みや、合う合わないは確かにあるわけで、私はやはり禅宗が好きだなと思っています。
おはようございます。
先週ご紹介しました熊野磨崖仏のほど近く、真木大堂へ。
真木大堂とは、六郷満山において中心的存在であった伝乗寺にあったお堂の一つと伝えられています。
ただし、文献なども残っておらず、さだかな事はわからぬまま。現在残っている9躯の仏像は、その名残とされています。
阿弥陀如来坐像と四天王、不動明王立像に制多迦童子・矜羯羅童子、そして日本最大級の大威徳明王(大きな牛に跨っておられる明王様です!)、いずれも重要文化財の指定を受けた藤原時代の傑作、お姿に魅了されてしまいました。
管理の方のお話によると、「小さい頃は阿弥陀さんの肩によじのぼったり、四天王の剣を抜いて遊んだりもしていたんです」と。なんと、驚愕の事実!
ですが、そのように子供時代に近く親しみながら、だんだんと大人達の信仰心に触れ、自然と宗教心が芽生え、育まれるのでしょうか。
私も世界各地の聖地を巡りましたが、ネパールでは寺院の狛犬の上に洗濯物が干され、子供の遊び場になっていたりと、あまりに自然に日々のくらしと“文化財”が共にある事に度肝を抜かれたものです。
確かに、守り、伝えてゆかねばなりませんので、文化財に指定され、鉄筋コンクリートの収蔵庫で大切にされるのも尊いのですが、木のお堂に鎮座し、近く拝めた時代もまた羨ましく思えたり……人間とは(私ですが)欲深いものですね。
いずれかの時代に浄土真宗寺院の檀家となった人々が、天台宗の仏像を大切に伝えてこられたからこそ参拝させていただけたわけで、この地域の方々には頭が上がらない思いなのでした。