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無事

buji.jpg無事是貴人 大道文可 (禅文化研究所蔵)


-本年もありがとうございました-

今年も残りわずかとなりました。
当研究所は本日が仕事納め、新年は6日から業務開始となります。
この一年を振り返り、皆様はどんな年だったでしょうか。

京都では9月に台風18号による水害に各地が見舞われ、自然災害が少ないとされる京都市内でも多くの被害が出ました。繰り返し映像で流れた嵐山の様子は記憶に新しいところです。
自然の猛威とそれを引き起こす地球環境の問題について改めて考えさせられました。

さて、昭和39年に発足した当研究所は、来年創立50年という大きな節目を迎えます。秋には5年ごとに行なっている禅文化賞の授賞式をはじめ、記念講演や記念出版などを企画しており、これからも禅文化普及のためさらなる活動を展開してまいります。
皆様にも禅に関する様々な情報を発信してゆく予定です。

本年もお世話になりありがとうございました。
どうぞご健勝で良い年をお迎えください。

事務局長 中川弘道

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デンマーク・森のようちえん ~Skovbornehave i Danmark*~

 

131225.jpgこども達が一日の大半を森の中で、自然から様々な学びを得て、一人の人間としての“個”を尊重されて過ごす。
そんな、"森のようちえん"発祥の地・デンマークにて、一年間の学びの時を経て帰国された久木麻亜矢(ひさき・まあや)さんのお話会にお邪魔してきました。

私の通っていた幼稚園といえば、行事が多く、お遊戯会やクリスマス会となれば、大きなコンサートホールを貸し切って催されました。子ども達はというと、その準備の為の練習時間が異様に長く、私は何だかいつも不安で、安心してのびのび遊ぶ・・・といったイメージからはほど遠い幼稚園生活を送り、行事の日には熱を出す事もしばしばでした・・・。
もちろん、それなりに楽しんでいた事もあるのですが、今思えば、あれはほんとうに子ども達の為になる事だったのだろうか、、、親や先生の満足の為のものではなかったか・・・と疑問を抱かざるをえません。

それぞれの個性もありますし、森のようちえんが誰にでも絶対に良いのだというわけではないのですが(私は今でも入園したいくらいですが!)、色んな選択肢が用意され、親が子どもの感覚を尊重し、幼稚園を選べる時代がくる事を願っています。

この日のお話会には、お子さんがいらっしゃる親御さんばかりが参加されていましたが、子どもがいなくとも(いえ、結婚すらしていませんが)、私にとっては、一人一人の人間の生き方の可能性を探る為の学びであったのと同時に、森のようちえんでのルールや、デンマークの人々の価値観など、日本のそれとは異なる文化に触れる貴重な学びの時間となりました。

 

久木さんは現在、様々な地へ赴いて、デンマークの森のようちえんについてのお話会などをなさりつつ、ようちえん開園に向けての準備をなさっています。

世の中には暗いニュースも蔓延していますが、一方では、子ども達の、日本の未来に向けてこのような明るい兆しを感じる活動も盛んになってきているように思える昨今。

パリでの花修行のみならず、京都の伝統文化の中にも身を置いた経験を持つ久木さんが、デンマークの森のようちえんの良い部分をを取り入れつつ、古来より四季の移ろいと共に生き、万物に神が宿ると信じ、自然を大切にしてきた日本人の感性を開花させられるような、そんなようちえんを誕生させてくれるを待ちわびています。
私としてはこのように、皆さんにお伝えしてゆく事、この活動を知っていただく事くらいしかできませんが、応援させていただきたいと思います。

デンマーク・森のようちえん  ~Skovbørnehave i Danmark*~
*写真は上記HPよりお借りしました

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映画『ペコロスの母に会いに行く』

今夜はクリスマスイブ。多宗教のわが日本では、家族でケーキを囲んで団らんし、サンタクロースが子供たちにプレゼントを贈るという素敵な夜がやってくることでしょう。
宗教に対しての軽い感覚はともかくとして、こうして過ごす家族の団らんというのは、きっと将来、いつまでも子供たちの心に残っていくんでしょうね。

さて、先般、京都シネマで『ペコロスの母に会いに行く』という邦画を観てきました。
そもそもあまり大きな映画館でやっていなかったし、ロードショーもほぼ終焉で観ることのできる映画館が少ないので、ご紹介しても観ていただけるかどうかわかりませんが、いずれDVDでも出ることでしょうから、是非ご覧頂けたらと思いご紹介いたします。

pekorosu.jpg

赤木春恵演じる認知症の老母と、岩松了が演じる息子ペコロス(ハゲでバツイチ)を中心とした、長崎を舞台にした家族物語です。原作は岡野雄一作の漫画。彼の実生活をもとにした作品で、ベストセラーを続けたのでご存じの方も多いことでしょう。

前半から中盤にかけては、劇場内からも何度も笑い声がこぼれるほどユーモラスなシーンが描かれます。しかし次第にひどくなる認知症の母を葛藤の末にグループホームに預けるペコロス、最近の記憶はどんどん失われていくが古い想い出が蘇り、その狭間を行き来する意識の中に生きる老母に、だんだんと引き込まれていき、終盤にはポロポロと涙しておりました。

とてもほのぼのとしたこの映画を観ながら、最近、物忘れが多くなった我が母とこの先を思い、自分が小さい頃の母との思い出も知らぬ間に回想していたのです。

そしてこの映画を撮ったのは森﨑東監督。映画を観た後に知ったのですが、彼自身も認知症になりつつあるという現実の中でこの映画を撮ったそうです。先日、NHKのEテレで、ETV特集「記憶は愛である~森崎東・忘却と闘う映画監督~」という番組をやっており、映画『ペコロスの母に会いに行く』の撮影秘話を知ることもできました。28日(土)に再放送があるようですよ。

このところ、終活という言葉がよく使われ、人々がエンディングノートにも興味を持ち始めています。どうやって自分の人生を終えていくか、ここに注目されているというのは、とてもいいことだと思います。
この世に生まれた限り、誰にも隔てなく約束されているのは、死ぬことだけなのですから。
どうか、いつか自分の人生を満足して終えられますように。

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毒湛老師、出雲へ 

 

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今回は、毒湛老師が、出雲の雲龍山城安寺という寺に行かれた時の漢詩です。

八雲立処神龍躍、任手斫開宝刃新。

読み下しますね。

八雲(やぐも)立つ処、神龍(じんりゆう)躍(おど)る、
手に任(まか)せて斫開(しやくかい)すれば、宝刃(ほうじん)新たなり。

これはもうヒントも不要でしょうが、さて、どんな場面を読んでおられるのでしょうか。

コメント欄にお答えいただきました方、先着3名様に弊社の禅語カレンダーをプレゼントさせていただきますす(後に住所をお伺いしますので、メールアドレスを必ずお書きください)。
前回は簡単すぎましたか?応募がいませんでした。職員一同がっかり。
コメントお待ち申し上げております!

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「禅僧が語る」 嶺興嶽老師

 

131219-1.jpgシリーズ10作目となる「禅僧が語る」。その撮影に同行するため名古屋市の徳源寺に伺った。今回出演いただくのは、来年4月より妙心寺派管長に就任される同専門道場師家、嶺興嶽老師である。この日の京都は今冬一番の冷え込みだったが、名古屋市内も同様で寒さをしのぎながらの撮影となった。
午前中は老師へのインタビューを中心に収録し、午後からは老師が諸堂を案内する様子や揮毫する場面の撮影となった。インタビューでは出家の動機から師である松山萬密老師との思い出、ライフワークにもなっている中国の祖跡巡りの話、さらに社会問題への所見など、2時間にわたって語っていただいた。

131219-2.jpg揮毫いただいたのは布袋図と画賛だが、カメラマンの注文に少し戸惑われた様子。よく絵を描く理由は、書では師に到底及ばないからだとか。布袋の姿は老師ご自身を表すような趣きあるものであった。

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医師・早川一光先生 講義のご案内 -臨床僧の会・サーラ-

 

131218.jpg季刊『禅文化』230号にて特集させていただきました、“臨床僧”。私の友人などからも驚きの声と共に、素晴らしい活動だという声を聞くことができました。

「臨床僧の会・サーラ」は、僧侶が医療や福祉の現場に入って、患者さんやそのご家族、お年寄りや障がいをお持ちの方々のお世話をさせていただきながら、喜びや苦しみを共にし、いのちの安心(あんじん)を分かち合い、生老病死(しょうろうびょうし)の伴走者としての活動を続けています(公式HPより)。

そんな会において開催される勉強会などの最新情報を、ブログ禅でもご紹介させていただきたいと思っています。
今回は、日が近づいていますが、12月21日(土)に開催予定の「早川一光先生 講義 衣笠塾」についてです。

2013年12月21日(土)午後4時~
京都衣笠の先生の研究所にて開かれるとの事です。

テーマは「病・病気」について

参加希望、お問い合わせはこちらからどうぞ。


研究所のサンガセミナーにおいても、僧侶をはじめ、多くの方と接する機会があるお仕事に就いておられる方や、身近な人を癒やしたいという思いをお持ちの方に向けて、コンフォートハンドや色彩心理、ホメオパシーなどの講座ができないかと模索中です。僧侶はもちろん、一般の方にも参加していただけます。
また来年度の開催項目が決まりましたら、ご案内させていただきます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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高野山へ

 

131217-1.jpg先日も、大分の僧堂の老師が、檀家さんが四国八十八ヶ所の参拝に行きたがるのだとお話されていらっしゃいました。

日本におけるお大師さん信仰は、日本全国津々浦々まで届いているかのごとく、京都の小さな路地にあるお堂でも、毎月21日(お大師さんの月命日)にはご開帳し、近所のおばあさんが御守をされて、皆が参ります。

かく言う私も、年に一度は高野山へのお参りをと思っていたりします。
今年は秋の紅葉の頃だったせいか、世界遺産に登録されているせいか、多くの日本人のみならず、海外からの人も多く、山一体が不思議な力に満ちた高野山の地には、人が溢れていました。
車で向かうにも、列車で向かうにも、「ちょっとそこまで・・・」とはゆかない地ですのに、多くの参拝者が耐えない事に不思議さを抱きつつ、自分もその一員ではないか・・・とふと我に返るのでした。
お伊勢さんに高野山、日本人の信仰のふるさとのような感覚を覚えています。

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百尺の金鱗 正解は?!

 

131216.jpg

 

百尺金鱗躍搏天、騰光照射景陽巓。
百尺の金鱗(きんりん)、躍(おど)って天を搏(う)つ、光を騰(は)せて照射す、景陽の巓(いただ)き。

先週木曜日に出題しました問題の答えです。
簡単すぎましたか?! 名古屋城大天守の金の鯱(しゃちほこ)です。

ただし、鯱だとわかっただけでは、この漢文を理解するまでには到らないのです。もう一つふみこんで考えねばなりません。

「金鱗」は、「網を透るの金鱗」などと言われて、勝れた禅僧の喩えに使われますが、ここは、名古屋城の別名である金鱗城に引っ掛けて言われたものです。
それが分からないと、名古屋の「総見寺」と「金鱗」はまったく結びつかないのです。

禅録を読むには、仏典や祖録の教養が必要ですが、禅のお坊さんたちは、時々こういう引っ掛けをして下さいますから、後の者は困ってしまいます。ヤレヤレです。

次回は、出雲に行かれた時の偈頌から出題しますのでお楽しみに!

*画像はWikipediaよりお借りしました。

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今週の花

 

131213-1.jpg枝にみのむしが!!!


上司が自坊よりロウバイの黄葉した枝、梅の枝、侘助(椿)、すすき、ウィンターコスモスなどなどを持ってきてくれました。

先週の花もこの季節ですのでもちがよく、まだ元気でいてくれて、秋から冬へと移るもの寂しい季節ですのに、花ざかり!となっている研究所です。
持ってきていただいたものは全て使い、残ると家に持ち帰ってまた生けます。素人は素人なりに、楽しく生けています。ありがたいことです。

131213-2.jpgちなみに本日はまた違う上司が白菜を持ってきてくれました。
職員皆、今夜はお鍋でしょうか?!
お寺ならではの自然からの恵みに、感謝の一日です。

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百尺の金鱗

 

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職員自坊の花

小生、ただ今、『毒湛和尚語録(どくたんおしょうごろく)』という文献を読んでいます。
毒湛和尚は、明治期を代表する禅僧の一人です。
そこに、こんな偈頌(げじゅ・漢詩)があります。

 

百尺金鱗躍搏天、騰光照射景陽巓。

漢文のままだと、とても難しいので読み下します。

百尺の金鱗(きんりん)、躍(おど)って天を搏(う)つ、光を騰(は)せて照射す、景陽の巓(いただ)き。

「百尺の金鱗が躍り上がって天を打ち、光を発して景陽山の頂きを照らしている」という意味です。これは毒湛さんが、名古屋市の景陽山総見寺という寺に行かれた時の偈頌です。
そこで問題です。この「百尺の金鱗」は、具体的に何を言っているものでしょうか?
「具体的」という言葉でもうお分かりでしょう。特に名古屋に住んでおられるかたには簡単な問題です。

おわかりになられた方は、コメント欄にご記入ください!(ペンネームで結構です。メールアドレスは必ずご記入ください)。正解者の方(先着3名)には、研究所のカレンダーをプレゼントさせていただきます。

*正解は、来週月曜日に掲載させていただきます。

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西村惠信所長 淡彩画展

 

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禅文化研究所所長西村惠信先生の趣味は淡彩画。
先般の禅と文化の旅の途中、慈照寺(銀閣寺)ででも、拝観中にスケッチブックと鉛筆を取り出してデッサンを始められるほど、行く先々で写真を撮るように描かれてきました。
去る7月に傘寿を迎えられた先生は、今まで描かれてきた淡彩画の一部をまとめた画集『いのちの風光』(非売品)を自費出版して、傘寿祝賀会の出席者にプレゼントされたほどです。
今回、そんな中から数点を展示される展覧会が、京都東山の小さなギャラリーで開かれています。会期が短いですが、お近くにおいでの際には、是非お運び下さい。

 


第三回 三余居(西村惠信)淡彩画展
とき:2013/12/8~12/21 11:00~17:00(ただし12/15・16日は休館)
ところ:ギャラリーめん(TEL 075-771-6343)
京都市東山区東町243(ウェスティン都ホテル京都 斜め向かい)
地下鉄東西線「蹴上」駅②出口より徒歩3分


※先述のとおり淡彩画集『いのちの風光』は非売品ですが、もし手元に欲しいという殊勝な方がおられるようなら、研究所までお便りをいただければ進呈しますと所長が申しております。

〒604-8456 京都市中京区西ノ京壺ノ内町8-1  花園大学内
禅文化研究所所長 西村惠信 宛

 

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成道会

 

131210-1.jpg12月8日(日)には、各寺院にて、成道会の法要が厳かに執り行われていた事と存じます。

私めは、さぞかし紅葉も綺麗であろうとふらりとでかけた大徳僧堂にて、ぴしゃりと閉じた門と、そこにあった張り紙に「そうか、今日は12月1日だった・・・」と、身が引き締まる思いがしたものです(それを見るまで呑気な事で忘れていました、申し訳ないことです)。

そして、ほぼ毎日のように老師の提唱を掲載してくださる居士林だより(円覚寺さんのブログです)を拝読し、朝あたたかいベッドの中で目覚める度に、「あぁ、布団から出たくない」と一瞬は思うのですが、その思いを吹き飛ばし、「いや、雲水さんは横にもならずに寒い所で坐禅を続けておられるのだな・・・有り難い事だ、それにひきかえ私はどうであろう・・・」と思ったものでした。

131210-2.jpg寒さや膝の痛み、眠気、妄想、極限まで坐れば、それらはどのように自分の中で変化を見せるのでしょう。雲水さんにインタビューとはなかなかできぬ事ではありますが、興味がありますね。お聞きしてみたいものです。

 

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開花

 

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蕾がぷっくりと膨らみ、まさに開花せんとする時、一番強い力を感じますね。
まだかまだかと待ちわびていましたら、先週末に開花しました。

こんな小さき花にも宿る神仏のはたらきに、感動しています。

咲く前の様子はこちら

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第11回 禅と文化の旅 ご報告 その2

昨日にひきつづき、第11回禅と文化の旅のご報告です。

131206-1.jpg相国寺塔頭・慈照院、承天閣美術館を後に、下鴨福助さんにて昼食をいただいてから、午後からは慈照寺(銀閣寺)さんにお邪魔させていただきました。

まずは、今回の旅において皆さまに実際に見て感じていただきたいと願っておりました、慈照寺花方・珠寳先生による献花です。
研究所所員の川辺が、季刊『禅文化』にて、-慈照寺の花-を取材させていただいているご縁もあり、今回有り難くもこのような運びとなりました。

献花中のお写真はご覧に入れる事ができませんが、珠寳先生と花、そして参加者の皆さんの気が一点に集中したところで、その気を感じとり、「みなさんと一緒に生けさせていただいた」と仰る先生。
凜とした静まりかえった中で、皆で花に集中させていただき、坐禅や瞑想をする時のような心地を得て、皆さまそれぞれの内に静かな感動がわきおこったように感じました。

献花の後は先生からお話をいただき、さらに質疑応答の時間をもうけさせていただきました。皆さま、質問にも先生のご回答にも非常に熱心に聞き入っておられたのが印象的でした。
慈照寺研修道場の風信に、この日の様子が掲載されています)


ひきつづき、弊所所長・西村惠信による講演です。

131206-2.jpg-久松真一博士が唱えられた「禅美術七つの性格と、その禅的根拠」について-

という内容で、以下の事をお話してくださいました。とても興味深く面白いお話でしたので、いつか季刊『禅文化』にでもご紹介できれば・・・と考えております。


禅美術七つの性格
その禅的根拠

1)不均整 完全性を破ったもの 無法の法、無聖
2)簡素 さっぱりしたこと 純一無雑、無一物
3)枯高 さびる、侘びるに同じ 脱落、露堂々、孤危峭峻
4)自然 わざとらしさのないこと 無心、無念
5)幽玄 含蓄、余韻、奥床しさ 無底、無一物中無尽蔵
6)脱俗 仏にさえ拘わらぬ洒脱さ 独脱無依、無碍自在
7)静寂 静騒に関わらない静けさ 鳥鳴山更幽、一黙如雷

 

惠信所長の講演後は、慈照寺の特別拝観。
書院大広間の富岡鉄斎による「大江捕魚図」、本堂内の与謝蕪村・池大雅による画、弄清亭の奥田元宋画伯の画を拝見。さらには阿弥陀如来や義政公を拝ませていただき、かの東求堂も拝観。
この地に残された日本が誇るべき禅文化をじゅうぶんに堪能させていただけました。
所長は、本堂前から見る観音殿に心奪われ、写生をはじめられ・・・・・・。

131206-3.jpgご参加いただきました皆さま、慈照院様、承天閣美術館様、慈照寺・珠寳先生ならびに研修道場、拝観ご担当の皆さま、お世話になりありがとうございました。
心より御礼申し上げます。

また来年も、春か秋、または両方の季節に開催させていただければと考えております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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第11回 禅と文化の旅 ご報告 その1

 

131205-1.jpg11月28日(木)に開催させていただきました、第11回禅と文化の旅
今回は33名の参加者の皆さまと、所長・西村惠信、付き添いに所員の西村と川辺がご一緒させていただきました。

お一人のキャンセルも無く、皆さま元気にご参加いただき、またご無事にお帰りいただけたようでとても嬉しく思っております。
「禅文化さんがいらっしゃるのなら・・・・・・」と、快く迎え入れてくださる訪問先のご寺院や美術館の皆さまにも心より感謝しています。

さて、京都駅で集い、まず向かいましたのは相国寺塔頭・慈照院。
ご住職直々にお出迎えくださり、方丈にて慈照院の歴史などをご説明いただきました。
延徳2年(1490)足利義政の塔所影堂となり、その法号より慈照院となった寺院で、第七世の仏性本源国師と桂宮家の交流により、御学問所(現在の書院棲碧軒)が設けられた由緒ある塔頭です。
平安時代の作と伝わる本尊の十一面観音や、宮家の方々のお位牌も拝ませていただきました。

131205-2.jpg「昨年の方が鮮やかだったんだよ」と教えてくださったお庭の紅葉ですが、初めて目にする我々には、じゅうぶんに美しい紅葉で、皆さま思い思いに写真を撮られ、なかなか次へ移動できないほどに魅了されていらっしゃいました。
自然の魅力とはすごいものですね。

131205-3.jpg方丈を後にし、本源国師と千宗旦との親交による合作の茶室・頤神室の拝観へ。
ご存知宗旦狐の逸話などを拝聴してから、庭の露地を歩いてお茶室へ。少人数入れ替わり立ち替わりでの見学でしたが、実際に露地を歩かせていただき、お茶室へと歩みを進める時、浮き世の塵を少しでも清めてから茶室へと向かいたいと思う茶人の気持ちが感じとれた事と存じます。

131205-4.jpgもっとゆっくりと拝観したい気持ちを抑え、後ろ髪ひかれながら、お次は相国寺にあります美術館、承天閣美術館へ。開館30周年を記念して、円山応挙展が開催されています。今回は、応挙のみならず、弟子達など、いわゆる円山派を代表する長沢芦雪や呉春などの作品も。眼福のひとときでした。


明日へとつづく。

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新刊 『おしゃかさま』

 

131204.jpg研究所としては久しぶりとなる童話の出版です。

『おしゃかさま』 さく・もりみすず え・おかべしょうこ/まつだゆか

“生老病死”(四苦)というおしゃかさまの教えが、幼い子供たちの心のささえになって広がっていくことを願い、京都在住の熱心な禅仏教の信者さんによって著わされたものです。
「はなまつり」「おじいさんとおばあさん」の二話を収録。
お子さん、お孫さんとご一緒にどうぞ。

禅語カレンダーもご好評いただいております。
東嶺禅師の神儒仏三法合画が表紙となっております!個人的に大好きです。
千真工芸さんの、禅語墨跡カレンダーも取り扱わせていただいております。
こちらもあわせて、よろしくお願い致します。

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今週の花

 

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ほんとうは山へ分け入り、生ける草花を採取!が夢なのですが、都会ぐらしではままならぬ為、花屋へでかけます。
京都には比較的、野山の枝もの、和花などを扱う店が多く在り、店の主から色々と教えていただく事も多く、助かっています。
まず、研究所玄関には、寒桜の一枝と椿を。花器は西岡義弘作。


131203-2.jpg書架のあいた箇所には、なごりの老爺柿(ろうやがき)を。備前の小西陶古窯の花入れに。
そして家には、ゆく秋を惜しみ、冬を迎える気持ちをこめて、老爺柿と椿を生けています。
花器は土楽窯・福森道歩作の徳利です。

131203-3.jpg花はその場の気を変えてくれます。
私にとっては、日々のくらしに三度の飯と同じくらいになくてはならぬものです。

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いつかは・・・・・

 

131202.jpg風外慧薫「布袋」:奇品堂蔵

 

「私にはまだ男としての未来がある」と強く信じた老人は、何十年も連れ添った妻と離婚する。悲嘆に暮れた妻は自殺を計った挙げ句、占い師に心を預ける。夫婦の一人娘はキュレーターとしてギャラリーで働き、売れない作家の夫を養っている。日中暇な夫は、向かいのアパートの若い女性に心を奪われ昼食に誘う。精彩を欠いた夫に不満なキュレーターはギャラリーのボスに惹かれる。老妻と別れた老人は若いコールガールに恋をして妻に迎える・・・

鬼才ウディ・アレン(監督・脚本)の「恋のロンドン狂想曲」(原題:You will meet a tall dark stranger)を観た。陳腐な筋立てなのに、役者も脚本もピカ一だから、面白さは半端ない。大した事件も起こらないのに、本人たちの日々は七転八倒、だれもかれも心のなかは大変だ。ただ、透けて見えるのは、私自身も含めて、世界はこんな人たちで埋まっているんだなということだ。ありそうもないどころか、微に入り細にわたってどこにでもありそうな話なのだ。私たちはこんな日々を大真面目に「生きる」と称して送っている。映画を観て、「なんて愚かな・・・」と笑えるのは、この登場人物たちとの間にちょっとした距離があるからだ。つまりウディ・アレンの眼差しで人物たちを見ることができるからだ。

登場人物の誰もが、辛く、悲しく、切なく、寂しい。躓(つまず)きがあり、衰えがあり、老いがあり、それでもひたすら「愛のようなもの」を追いかけている。

原題のYou will meet a tall dark strangerは、占い師が夫と別れた老婦人に言う言葉。「いつか背の高い黒髪の男に会えますよ」。いつかいい人にきっと巡り会えますよという決まり文句だ。「いつかは・・・」これが万人の希望に繋がる唯一の道だ。

アレンは今年78歳。ヒットを連発した監督の「いつか・・・」とは何だろう。滑稽さと優しさと諧謔が秀逸の会話で綴られる監督の作品に通底するのは、いつだって人間存在の哀しさだ。「人はいつかは死を免れない」。いつか会えるという「背の高い黒髪の男」はもしかしたら「不可避の事実」の暗喩と言えなくもない。

そう思いをめぐらせると、正月に髑髏(されこうべ)を竹棒の先にさして、家々の門口を「ご用心、ご用心」と言って回ったという一休禅師の面白さと、” You will meet a tall dark stranger”とそっと知らせてくれるアレン監督の親切が、綯(な)い交ぜになって、作品のかなたにボオーッと浮かんでくるのである。

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