トップページ » 2011年6月13日

『禅文化』220号 技を訪う -ヨガ-

日々の生活で出会った素晴らしい様々な“技”を、季刊『禅文化』にてご紹介しています。
本ブログでもご紹介させていただきます。
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季刊『禅文化』220号より
“技を訪う―ヨガ”  川辺紀子(禅文化研究所所員)

 三年ほど前だったか、運動不足の解消とダイエットの目的で、ブームになっているヨガの教室になんとなく行ってみた。女性受けを狙ったきれいな施設だったが、取り立てて惹かれるものもなく、一度の体験レッスンを受けたきりで、その後、ヨガのことはすっかり忘れていた。

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先生の笑顔。レッスン前には時節に合ったお話から、ヨガの哲学を学ぶ

 昨年は、さまざまなことが重なって身にふりかかり、夏の終わりには心と身体のバランスが取れずにバラバラになりそうな感覚を味わった。「ヨガに行ってみようか」。そんな思いがふと心を過った。自転車で通りがけに目にしていたヨガ教室が即座に脳裡に浮かんだので、さっそく体験レッスンを申し込んでみた。迎えた初日、おそるおそる教室の扉を開けると、先生の笑顔が目に飛び込んできて、安堵を覚えた。先生の明るい健やかな雰囲気が部屋にあふれていた。レッスンを受ける前に、「あァ、この先生でよかった。絶対にこの人を好きになる」と確信した。

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頭立ちのポーズ

 伊藤加奈子先生。学生時代の十年間は体操競技の選手だった。その後はダンサーとして舞台芸術に携わり、その道で生きてゆこうとしていた中で、レッスンの一環としてヨガに出逢った。得点を競ったり魅せることに重きを置く世界にいた間には感じたことのない動の中の静寂に心打たれた。ヨガの叡智を学ぶにつれ、自身が体操選手だった頃にメンタル面が弱かったことを振り返り、スポーツ選手がヨガをすれば普段の力をそのまま本番で発揮できる助けになると確信した。スポーツ選手専門のヨガインストラクターを目指すきっかけだった。しかし、ヨガの効果は思いがけずも、自分の身体にあらわれた。ヨガを始めてから、長年苦しんだアトピー性皮膚炎がいつの間にか治っていたのだ。普段の生活も脅かされるほどの痒さだったという。先生の輝くような肌を羨ましく思っていた私は驚嘆した。

 「ヨガが、自分自身を偏らないところに戻してくれるんですね。中庸や中道を教えてくれます」と話される先生を見ていて、初めての時に感じた圧倒的な“健やかさ”は、見た目の健康的な美しさだけではなくて、その内面からきていたのだと繋がった。
 現在はいくつかの場所でヨガの指導を行なっているが、特にスポーツ選手の指導を専門にというこだわりはなくなったという。ヨガを通してさまざまな職業や、いろいろな立場の人々に出会うが、どこに住んで何をしていようと、皆それぞれに現実社会を生きて何がしかの重荷を背負っている。「みんな同じだな」というのがヨガを教えることを通して得た実感だが、少しでも元気になってもらったり、気持ちが良いとレッスンに通ってくれる人がいるのが無性に嬉しい。

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by admin  at 07:30  | Permalink  | Comments (0)  | Trackbacks (0)