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続・ソメイヨシノ

昨日アップした「ソメイヨシノ」に、お叱り?のコメントを頂きました。

もしもお気にさわったのでしたら申し訳ないことで、決して本意ではございません。皮肉を込めた挑発的な文章にしたまでのことですが、いささか「反体制」がすぎたのかもしれません。ひねくれ者をお許しください。

わたしも決してソメイヨシノに恨みを持っているわけではありません。むしろ可愛そうだと思っているくらいなのです。

ソメイヨシノは花に特化して作られた品種です。ほかの部分ではあまりよい性質は持っていませんが、花はたしかにきれいで見栄えがあります。それゆえソメイヨシノは、特に戦後の復興期から高度成長期にかけて、そこかしこに植えられることになります。しかしそれは、自然破壊のカムフラージュと、手っ取り早い名所作り・人集めのために利用された部分が大きいのです。

わたしたちも、にわか愛桜家よろしく花をわずかの期間もてはやしたあとは、桜の木のことなどすっかり忘れて見向きもしません。むしろ夏は毛虫が多いだの秋は落ち葉が大変だのと厄介者扱いし、道路建設で邪魔になったら寿命だの何だのと理屈をつけて躊躇なく切り倒します。桜の花だけがクローズアップされる結果、桜の木自体はむしろよそよそしいものになってしまっています。

一見華やかには見えますが、本来病気に弱く寿命も短いはずのソメイヨシノの「異常繁殖」には、現代日本人のご都合主義が集中的に現れているような気がして、わたしには無邪気に肯定することは出来ないのです。

日本のそこかしこにある、桜の名所と称されている場所のソメイヨシノ一色の景色は、むしろ日本の桜文化を薄っぺらくしているように思われてなりません。ソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヒガンザクラ、ヤマザクラ…。人にそれぞれ特徴があるように、桜にも品種によって大きな違いがあります。花、葉、枝ぶり、樹皮の様子、木材の性質など、同じ桜でもこれほどまでに違いがあるのかと驚く程です。

わたしたちは、「桜」とは、花も、葉も、枝も、幹も、皮も、根も、木材としての利用も、人間との関わりも、すべてをひっくるめて「桜」であることを忘れがちです。花だけが桜ではありません。

せめて他の品種と混植すれば、花も長く楽しめて、今のようにあわただしい開花シーズンを過ごさずに済むでしょうし、何よりもそれぞれの桜の特徴も一目瞭然で、日本の桜の世界ももっと奥深く豊かになると思うのです。

なお、私のヤマザクラ讃は、何も本居宣長のマネをしているわけではなく、全く私の個人的な趣味、もっと言えば身内贔屓に過ぎないのであります。

私の実家の敷地の守り神のとなりには、ひともとのヤマザクラが佇んでいます。相当な古木ですが、今でも毎年花を咲かせます。私はそのどっしりとした幹と、鷹揚な枝ぶりと、えんがわに散りかかる花びらと、花と共に芽生える赤い葉と、夏の日差しを遮る濃い緑陰を眺めて育ちました。

それゆえ、いずこのソメイヨシノの大群も、わが一本のヤマザクラには及ばないと思ってしまうのは、どうしようもないことなのです。

by admin  at 07:30
コメント
  1. 丁寧なご説明、ありがとうございました。ご意見、よくわかりました。
    しかしながら、やはり昨日のお話はいささかお言葉のインパクトが強すぎたように思われます。正直申し上げて、最初から最後までソメイヨシノを徹底的に否定する文章には当惑し、悲しくなり、そのためにご本意を理解するには至れませんでした。感情的すぎて冷静でなくてまったくお恥ずかしいのですが…。
    私の取るに足らないコメントに、誠実に対応してくださって、とても嬉しく存じます。ありがとうございました。

    by カピバラ  2010年4月22日 13:03
  2. 質問です。自然にソメイヨシノとヤマザクラの混合種というのはうまれないものなのでしょうか??もし生まれたとしても、見る人が見ないとわからないのかなぁ?

    by のり1981  2010年4月24日 14:08
  3. カピパラさん
    こんにちは。いつもご覧いただきありがとうございます。研究所には色々なメンバーがいて、それもまた一興と思っていただければ…と思います。笑
    ソメイヨシノについてを書いた人物は、まれにみる博識でかなり面白い人物です。ただ、文章だけでは確かにその人柄はわかりづらい…というかわかりませんよね。失礼を致しました。
    これからも宜しくお願い致します。

    のり1981さん
    いつもご覧いただき、ありがとうございます。
    さて、そのようなご質問に関しましては当方は全くの門外漢ですので、お応えいたしかねますが…。
    考えた事もございませんでしたが、憶測で申しますと、生まれなさそうですよね…。いや、専門家にお尋ねになってみて、またわかりましたらお知らせ下さいね!

    by 禅文化研究所  2010年4月27日 14:04
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