トップページ » 2009年1月21日

青岸渡寺でみつけた硯

「那智黒」と言えば、まず思いつくのは、「那智黒飴」かもしれない。もちろん、もともとは那智でとれる上質の黒石を擬して作った飴玉なのであるが、この那智黒石は上等の囲碁石として有名である。
そしてもう一つ、事前に詳しく知っていたわけではないのだが、この那智黒石の硯も天下無二のものらしい。

青岸渡寺の山門に向けて登る途中、参道にある一軒の硯店に立ち寄った。「山口光峯堂」という。表の看板には「皇室献上」の文字が。また「癒しの墨摺りを是非体験してください」というような文言も。

この参道には何軒もの硯販売店があるのだが、店主らしき人が他のお客さんに話している言葉遣いが優しくて、「硯は絶対に試し摺りしてから買いましょうね」と言われる言葉に、店の中に引き込まれた。
店の中には、沢山の硯が大小とりまぜて並んでいる。
同じようなサイズの硯でも何千円も違いがあるなぁと思っていたら、先ほどの店主(二代目 山口光峯さん)が説明してくださった。

「安い方は、天然石ではあるけれども、大きな石から切り出した物を硯にしたものです。そして高い方は、まれにしか採れない"玉石"」から作ったものです」と。玉石の方(「曼荼羅の径」という硯)の中で、自分に足りそうな比較的小さいものを手にとってみたところ、ずしりと重く、またただ丸いだけで飾りはないがその表面の美しさに心が動いた。そして、是非試し刷りをと仰るので、摺ってみたところ……。
目から鱗が落ちるとはこのことだろうか。今までの硯は何だったんだろうと思うほど滑らかなのだ。墨を摺る時、なんとなくザラザラ感があって、これで墨が摺れているんだという感覚を持っていたが、それは全くの誤りだったわけである。とても滑らかに、ぬるぬる摺っていくという感覚だった。

青岸渡寺でみつけた硯の続きを読む

by admin  at 07:30  | Permalink  | Comments (0)  | Trackbacks (0)