公益財団法人 禅文化研究所

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調査研究

オウム真理教問題研究会 第1回研究会(準備会)

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討議事項および開催計画

研究会構成員が「オウム真理教」ならびに「オウム事件」に関連して各自の率直な意見を披瀝しあい、研究会として検討されるべき問題と検討方法とが定められた。

披瀝された意見から二つの基本問題が浮上してきた。すなわち、

(1)「オウム事件」を生み出した日本社会の歴史的文化的背景という問題
これに関しては、戦前戦後を通じて日本の公教育においては真の宗教教育(衆生の生死をみつめる教育)がなされてこなかったこと、また戦後の社会・経済の急激な進展にともなう価値観の多様化と不安の増大(これに伴う現象としては新・新興諸宗教の発生や若者の既成宗派の枠を越えた「解脱」志向などがある)という問題などが指摘された。

(2)既成宗教としての禅宗とその教団の現代社会に対する責任という問題。
これに関しては、宗門人が、寺と檀家と教団の日常性に安住して、その足下に起こっている自らの日常性の崩壊現象に関してあまりにも無関心であり、現代社会の歴史的動向について基本的に認識不足であるということ、それゆえ、宗教者としても教団としても現代人・現代社会が抱えている基本問題に何ら有効適切な対応をなしえず、結果として、寺は単なる儀式場となり教団は現代社会から遊離して異様な歴史的遺物に化し去ろうとしているという反省がなされ、宗門人の禅僧および住職としての自覚と見識、禅の伝統的な修行形態、現在の布教活動、各寺院ならびに教団の現状と体制などが問題として提示された。

以上二つの基本問題に集約される諸意見の背景にあったのは、「オウム真理教を生み出した土壌は宗門にもある」ということ、従って、「オウム事件」は他人事、単なる一つの社会的事件ではなく、それによって、禅僧一人ひとりの在りようと禅宗教団そのものの存在意義が問われている「われわれの事件」である、という共通認識であった。

このような問題意識から、研究会構成員は、従来の教団組織体制を背負って参加している者ではあってもその肩書きにとらわれず、また、各組織の情況ないし傾向などを研究会に持ち込まずに、一人の禅僧として自由かつ率直に研究討議を重ね、以て、研究会の成果が各教団組織に新たな意識を生み出すようなものとなるよう努めるべきであることが確認された。